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【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟


 一体何が起きているのか考える暇なんてなかった。中学生のを見つめる一人の男に視線を外すことができなかったから。男は獲物を狙う蛇のような瞳でただじっとを見つめ、不気味に口角を上げて笑った。まるでシャッターを切るように場面が切り替わる。高校生になったがまだ幼い弟と手を繋いでいる姿が映し出された。仲睦まじい様子の姉弟。楽しそうに笑うの笑顔に男は息を荒らげる。後ろをついて歩き、彼女たちが帰る家を見つけるとゆっくりと背中を向けて去って行った。

「これ……、なに……」

 声が震え血の気が引いた。まさかずっと前から自分がストーカーに遇い、しかもその相手が上司だなんて。内臓がぐるりと回ったような気がした。せりあがる何かを吐き出さないように口元を抑えるに夏油が優しく寄り添う。これ以上彼女に真実を見せてもいいものか悩んだが、知らなければいけないことだ。夏油はに「君も知るべきだよ」と囁いた。
 場面が切り替わり、高校三年となったは私服に身を包みどこか浮足立っていた。少し遅れて悠仁も楽しそうに笑ってはしゃいでいた。少女の足に引っ付いてニコニコと笑う姉と弟に母親もまた笑っていた。一目見て理解した。これは事件当日の日だ、と。玄関先で三人を見送る父親は大きく手を振っている。どこにでもいるような幸せそうな家族。しかしそれは次の瞬間崩れる。
 家の中に戻る父親の姿を確認した男は、ゆっくりと歩き出す。その手には刃渡り23㎝の包丁が握られていた。男は玄関先で父親が出てくるのを待ち続ける。そして数分後、事件は起こる。玄関の引き戸が開いたと同時に、男は父親の喉元に包丁を突き刺した。
 状況が判断できない父親の口からは大量の赤く黒い大量の液体がぼたぼたと零れ落ちる。勢いよく包丁を引き抜けば、勢いよく液体は噴射し天井を真っ赤に染め上げた。びちゃびちゃと返り血が男を汚していくが、それを気にも留めず床に倒れた父親に跨り、何度も何度もその身体に鋭い刃を突き立てた。びくんびくんと痙攣していた身体はいつの間にか動くことをやめていた。

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