第5章 やっと追いついた!
出来上がった兵糧丸を一つ味見する。
「うん、上出来だね。」
キビモチをふんだんに混ぜたから、ほんのり甘い。
この世界の兵糧丸って味がクソ不味いの。
それは、薬草の味を消す努力をしないから。
けど、相性によってはそれが相殺されて緩和する。
そこにキビモチを入れたら非常食としては美味しい部類に入るのだ。
それを凡そ1kg。
怒りに任せたのもあるけど、頑張った成果よ。
「ふぅ…。ちょっとスッキリした。」
散らかした調理器具を片付けていると、玄関からガタガタっと音がして、ひょこっと男の人が顔を出した。
「確か…。」
ウルジさん?だっけ…。
「えーっと…?ウルジさん、ですか?」
「は、はい…。ど、どうも…。」
少しおどおどしながら戸口に半分顔を隠して私を伺い見る。
だから、何で怯えるの…?
「あのー…、とりあえず入りませんか?」
「え、いいんですか…?」
いや、良いも何もあなたの家でしょうが。
「どうぞ。すみません、散らかしちゃいましたけど。」
私は戸口を開け放つ。
「あ、あの…。じゃあ…。」
と言っておずおずと入ってくるウルジさん。
いやいや…。
だから、あなたの家だって。
変な人。
でも、ちょうどいいや。
聞きたい事があったの。
きょろきょろと見回している彼に、取り敢えず座ってもらうように促して、緑茶に近い薬草茶を湯呑みに淹れる。
「どうぞ。少し苦いかもしれませんが…。」
「あ、ありがとう、ございます…。」
そう言って、やっぱりおずおずと手をつける。
…もう突っ込まない。私は何も言わないぞ。
「それで、お聞きしたい事があったのですが。」
「な、何でしょう…?」
「まずは、家を貸してくださりありがとうございます。」
「い、いえいえ!あの、その、こちらこそ。」
私が少し頭を下げると、ウルジさんも恐縮しながら頭を下げた。