第5章 やっと追いついた!
「私は二人とは後から合流したので、ここをお借りした経緯が分からないんです。どういった取り決めというか、交渉があったんでしょうか?」
宿代とかどうなってるんだろう?から始まった疑問だった。
後払い?先払い?物々交換?etc…。
引き払うのはどうすりゃあいいのよ?って思うじゃん?
「あのー…。そもそも、そのお二人は何処に…?」
「出て行きました。」
私はにっこりと返す。
「……!そ、そうですか…。」
びくっと驚きながら目を逸らしたウルジさんを見て、少し我に返った。
おっと。
怒りが、再燃するとこだった。
いかんいかん。
私は少し咳払いをして場を濁した。
「えーっと。それで、どうなんでしょう?」
「そうですね…。特にこれと言った取り決めはなく、二千両を差し出されて、暫く貸すように言われて…。」
え…?それだけ…?
何の取り決めもしてないの?
私が微妙な顔をしたのが分かったのか、もじもじとしだした。
「その…。僕、ご覧の通りビビりでして…。あの二人が凄く怖くて、それでお金を受け取って、そのまま家を飛び出してしまって…。」
あー…。
昨日の調子で、逃げてったと。
しかも二千両は日本円で二万円。
まあまあな額だけど、交渉次第ではもっと値を吊り上げる事だって出来ただろうに。
それも一泊だったから良かったものの、長い間居座られてたらどうするつもりだったんだろう?
たった二千両で。
大丈夫か?この人。
「えーっと…。じゃあ、私の分のお支払いをした方がいいでしょうか?」
この調子だったら、ぼったくられる心配はなさそうだけど。
「え、いや!いいです、いいですよ!要りません!」
まさかのタダだった。
本当に大丈夫!?この人!
「えっと…。悪いので、いくらかお支払いしますけど?」
調理器具も色々使わせてもらったし?
「いやいや、そんな。えっと、えーっと…。」
ウルジさんは、首を振りながらきょろきょろと周りを見る。
変なところで器用だね。