第8章 暁に依頼します!
だが、不意にエニシは泣きながら笑い出した。
「イタチも…泣いてる…。」
伸ばされた手はイタチの頬を包み、流れた一筋の涙が拭われる。
「ふふっ、あははっ。私達、こんな所で二人して泣いて…。ふふふっ。」
エニシの笑いに釣られるように、イタチは吐息と共に笑いを零した。
「そうだな…。ははっ。確かに可笑しいな。」
「あははっ…!なんか、ツボに嵌りそう…!」
二人は静かに笑い、自分の涙を拭いながら腹を抱えた。
一頻り笑った後、二人は顔を見合わせる。
そして、少し困ったように微笑み合うと、また歩き出した。
「でもなんか、スッキリしたかも。」
「そうか。」
イタチは晴れやかなエニシの横顔を見て、ほっと息をついた。
「ねぇ、イタチ。」
呼びかけに答えるようにイタチがエニシの目を見ると、彼女は嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう。」
海辺の光を受けた笑顔は、素直に綺麗だとイタチは思う。
「どういたしまして。」
イタチは目を細めてエニシの頭を撫でた。