第3章 久方ぶりの里帰り1
とある街中のとあるアパート。
その二階にナルトの部屋がある。
因みに、一件挟んで左隣にかつて私は住んでいた。
洗濯物が干してあることから、既に別の人が入っているのだろう。
「懐かしいな…。」
思わず呟いてしまうくらいには思い入れがある。
約半年程はそこに住んでいたから、その分ナルトとの交流もそれなりにある。
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『エニシ!何でいつもいつも邪魔ばっかりするんだってばよ!』
一楽で待ち伏せして回収するのはしょっちゅうだった。
さすがに朝昼晩ずっとラーメンとかありえないし。
どんだけ廃れた生活だと言いたくなる。
『ダメっつってんでしょうが!一食くらいまともなご飯食べなさいよ!』
見かねた私が晩御飯だけ作る、なんて事は日常茶飯事だ。
『どうせ、オレはひとりぼっちなんだから別にいいだろ!?』
『いいわけあるか!一人だからこそ健康には余計に気をつけなきゃいけないの!これ、一人暮らしの鉄則だから!』
見守ってくれるはずの親がいないのだから、自分で管理するしかないのだ。
『…今日もエニシが作ったのか?』
やけに大人しくなったな、と思いながらも家へと歩く歩幅は緩めない。
『そうよ。さつま芋の天ぷらも作ってあるよ。』
キライとか言い出すんじゃないだろうな、と思いながら振り返ると、緩みそうになる表情を隠すのに失敗して、不満顔を作ろうと必死になっているナルトがいた。
なーんだ。
満更でもないんじゃん。
私は吹き出しそうになりながらも足取り軽く家路を急いだ。
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…なんてやり取りはかなりあった。
それはもう、バイトの合間にナルトを世話する事が日課と言っても過言じゃないくらいに。
放っておくと、洗濯物から片付けから色々と溜まっていく。
それをガミガミと言いつつも掃除して洗濯して、時折それらのやり方を教えたりして。
記憶がない、なんて不安に陥る暇がないくらい世話が焼ける子だった。
本当に懐かしい。
今、元気かな。