第3章 久方ぶりの里帰り1
「入里札を見せてくださーい。」
順番が近づくにつれ聞こえてくる声。
大丈夫かな…。
めちゃくちゃドキドキする。
一応、忘れたことにして、当日発行券を貰う算段だ。
うぅ、上手くいきますように!
「拝見します。」
遂に順番が来た。
私はカバンの中を探すフリをする。
「あっ、すみません。入里札忘れちゃったみたいで…。」
「困りましたね…。家はここから近いですか?」
「いいえ、片道十時間はかかります。」
ええ、真っ赤な嘘です。
「そうですか。」
「なんとかなりませんか?今日を逃したら次いつ里に来られるか…。」
私は必死に困った顔を作ってみせる。
すると不思議なことに、みるみる態度が軟化していく。
「じゃあ、特別に。次は気をつけてくださいね。」
「ありがとうございます。さすがは大国一の隠れ里ですね!」
ええ、処世術ですとも。
が、益々表情が緩む門番二人。
…こんなちょろくて大丈夫だろうか?
逆に心配になってしまう。
「楽しんでいってくださいね〜!」
二人に見送られ、私はまんまと入里を果たしましたとさ。
私、一応抜け忍なんだけどな…。
内心複雑に思いながらも、二人に手を振って走り出す。
まずはナルトを探してみよう。