第13章 浅緋(あさあけ)、君に口づける ✳︎✳︎
ん、朝か……瞼をゆっくりと開けると、外はまだ薄暗い。
目の前に視線を向ければ昨夜思いを伝え合い、恋人となった継子がいる。気持ちよさそうに寝息を立てて目を瞑る姿が愛らしい。
無防備な寝顔がそこにあった。手を伸ばして柔らかな頬にそっと触れてみれば、口元に笑みを浮かべる彼女。
自分の胸に優しく、愛おしい気持ちがゆっくりと湧き上がって来る。
よもや君から思いを告げて来るとはな。
一生懸命に気持ちを伝えて来た七瀬。俺からそろそろ伝えようと思っていた所に、願ってもいない愛しい人からの告白。
君が継子になって驚かされる事ばかりだったが、昨日はこれまでで1番の驚きだった。
「ん……」
恋人の眉毛が少し動く。これは目を覚ますな、俺は再度目を閉じた。
チュンチュン……と雀が鳴く音が聞こえる。
すると ——
「わっ、かわいい寝顔だなあ……」
予想通り、七瀬が目を開けた。むう、彼女の顔が見たい!
しかし……我慢だ。
俺の睫毛に小さな手がそうっと触れる。
「ん……」
気持ち良いがくすぐったい。つい声が出てしまった。
少しの”間”が出来る。どれ、このあたりで目を開けてみるとするか。
「”かわいい”は男に言う言葉ではないな」
「んぅ……」
七瀬の唇を、俺は自分のそれで包むように当てた。そして舌を差し入れ、朝にしてはやや深めで濃厚な口付けを贈る。
お互いの息が混ざり合い、艶やかな水音も心地よく耳に響く。
『やはり何度も口づけたくなる唇だ……』
しばらく口内を舌で辿る。彼女が気持ち良さそうな事を確認すると、唇をゆっくりと離していった。その際、2つの唇を繋いだ銀色の糸がきらりと光る。
「おはようございます……」
少しだけ俺を睨むようにして、挨拶をして来る七瀬。