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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎




「………」

「七瀬?……下も頼む」

「あ、はい……」

少し見惚れていた私は杏寿郎さんに声をかけられて、再度自分の手を彼の服に戻すけど……震えがまだ少しあった。


帯革(=ベルト)を外した後は黒い足袋、炎模様の脚絆を脱がして、洋袴をゆっくりと下ろしていく。
そして下着なのだけど —— ここで、私の手が一瞬止まる。


「あの、これはちょっと……」
「ん?ああ、そうか」

杏寿郎さんは自分で褌(ふんどし)の紐をするりと外して取り払う。ぱさりとそれが畳に落ちると、互いの姿は産まれたままの体になった。

目の前の杏寿郎さんの体をちらっと見る、が。
身震いしそうな程ドキッとしてしまい、目を逸らしてしまった。

『予想はしていたけど、思った以上に……すごい筋肉……』

ドキドキと鼓動が速度を増していく。



「七瀬、俺を見てくれ」
私の左頬をそっと包むと、ゆっくりと正面に向けてくれる彼。


「すごく緊張して来て……すみません.」
「それは君だけではないぞ?」

杏寿郎さんは、私の右腕を掴んで自分の胸に当てた。
ドク、ドク、ドク。
先程からずっと早鐘を打っている自分の心臓の鼓動だけど、それと同じくらい速い音が私の掌に響いてきた。


「本当だ。同じですね」

「そうだろう?君をここに連れて来た時から、このような状態だ!」

「ふふ、そうなんですね。あまりにも堂々としているから緊張なんてしていないのかと思っていました」

「緊張をするなと言うのが無理難題だ!」

良かった、私だけじゃなかったんだ。嬉しい……。


「傷……たくさんありますね」

彼の胸から肩に右手を動かして 、そこにある傷をそっとゆっくり触ってみる。最近出来た物ではなさそうだった。


「鬼殺隊に身を置いている限りは仕方のない事だろう?」

杏寿郎さんも私の左頬に当てていた手を下に滑らせ、鎖骨にある小さな傷を労うようにそっと、優しく触れてくれる。

そこ、確か初めての任務で怪我した所だ。
そして ———


「君の背中を見せてくれないか」
彼が私の瞳を上から覗き込みながら、言って来た。

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