第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎
十一月中旬、秋も深まって来た静かな夜。
俺は任務が終わり、自宅に戻って来た。門扉を開け、中に入る。すると庭に人がいる気配がある。
こんな二十三時も回った時間に誰だ?父や弟はとっくに寝付いているはずだ —— となると、考えられるのは後一人。
継子の沢渡だ。
寒い中、何をやっているのか。俺はふと目線を上げてみた。満天の空から次々と流星が降って来ている。なるほど、これを観ているのか。
そのまま庭に行ってみると、予想通り継子が防寒をして夜空を見上げていた。
「うむ!見事な夜空だな」
「え?」
彼女が面食らったような顔で振り返る。流星に夢中で俺の気配には全く気づかなかったようだ。
今は良いが、これが鬼殺だと確実に仕留められているな。そんな事をつい思ってしまう。
「あれ?師範、任務に出かけたんじゃないですか?」
「もう終わった」
そう答えを返すと、あっけに取られた表情をする沢渡は俺の元に駆け寄って来た。
「ずっと見ていたのか?」
「はい!以前から見れるのを楽しみにしていたので……」
やや興奮気味に答えを返して来る彼女だ。
確か沢渡は星が好きだと聞いた事がある。なるほど、それ故か。
「流星群を見るのは初めてですか?」
「ああ。鬼殺をしているとなかなかこうやって星を見上げる事もないからな」
「そうですよね……」
彼女は再び夜空に視線を上げる。とても嬉しそうな表情だった。
「所でこれは一晩にどれくらい流れる?」
一人で観測するぐらいだ。数十個やそこいらではきっとないのだろう。
「しし座流星群には母天体と言って、元になる彗星があるんですけど。その彗星が太陽から遠い位置にあると、一時間に数個ぐらいしか見れないんです」
「彗星か……」
「はい。でも今日の様子だと、一時間に数千個は……流れるかもしれませんね」
「……凄いな!!」
数千個とは…予想以上の返答が返って来て心底、驚いてしまう。
「ええ。凄いんですよ」
「君が星についてそれだけ知っていると言うのにも感心したぞ」