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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第10章 恋柱・甘露寺蜜璃









「煉獄さん、どれが好みだと思います?」

「甘露寺の感性で選んでやれ!その方がきっと気持ちも伝わるんじゃないか?」


蜜璃と杏寿郎は昼食を済ませた後、対面側の店舗へ移動していた。名称は「北村製菓店」
店ののぼり旗には”あめ細工体験出来ます”と記してあり、店先には平たい竹籠に入れられた飴が、手前から店奥に向かって並んでいる。


「うーん。伊黒さんの羽織の柄が縞模様だから……それに近い物が良いのかなあ。でも、全然違う物を選ぶのもありかしら」


顎に手を当てながら首を傾げて思案する彼女は鬼殺隊の恋柱ではなく、恋する女子のそれだった。何故製菓店に来たのかと言うと、小芭内は飴細工が好きな為だ。

特に作っている工程をじっと眺めるのが好みとの事。

彼の誕生日は九月なのだが、柱同士の二人は互いに多忙な為、十月になった今もまだ贈り物が渡せていない。
それを蜜璃が信頼する杏寿郎につい吐露した所、今から選びに行こう!と炎柱が提案したのだ。


「しかし、色々な種類があるのだな!見てるだけでも楽しいぞ」
「そうですよね、私も自分用に買って帰ろうかと思います」

蜜璃が持つ籠の中にはあさがおとひまわりの絵が書かれた飴、それから鼈甲(べっこう)飴と薄荷(はっか)飴がそれぞれ入っている。

『カステラが好物と言っていたから、飴も好きなのだろうか』


杏寿郎の脳内に浮かぶのは、これ以上の幸せはない…と言った表情を浮かべながらカステラを食す継子の表情だ。

彼の口元にふっと笑みが宿った所へ「七瀬ちゃんの羽織と脚半(きゃはん)は八雲柄だから、雲の絵が描いてある飴も良いかもしれませんね!」と蜜璃の弾むような声色が耳へ届く。

「む……!」

杏寿郎が恋柱を見ると、とてもにこやかな顔をしている彼女がそこへいた。

「何故沢渡の名前がここで出るのだ?」

「昼食時に七瀬ちゃんの話題になりましたよね?あの時と同じ顔をしていましたよ、煉獄さん」

「よもや」



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