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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第38章 父と息子の初炎武(えんぶ) 〜二人の炎柱〜



ミーンミンミンミンミンミーン、ジジジジジ。二種類のセミが屋外で元気よく鳴いている。

七月下旬は盛夏(せいか)と呼ばれる時季で、大正時代の夏の平均気温はおよそ二十五度。

令和の体温に近い、または体温を超える暑さ —— 【酷暑】とは違うが、屋外で長時間過ごしているとじわじわと体力を消費する気温ではある。

先日杏寿郎が七瀬と川越に出かけ、帰宅した際に槇寿郎からこんな事を言われていた。

「千寿郎の稽古を再開して以来、体の調子が良いんだ。もちろん柱をやっていた時のようにとはいかないが……杏寿郎、お前と勝負がしたい」

「光栄です!! こちらこそよろしくお願い致します!」







「ここで手合わせをする時は、いつも天気に恵まれるな! しかし、今日はいささか暑い!!」

「夏ですしね。それにお二人は走って来ているから暑いのは仕方ないと思いますよー」

「俺は非番の時で構わんと言ったんだがなあ」

「父上、兄上は早く手合わせしたくて堪らなかったんですよ」

煉獄家の男三人と七瀬がやって来たのは、杏寿郎と七瀬が初めて師弟対決をした場所である。煉獄家からおよそ二キロの距離。

杏寿郎と槇寿郎は準備運動がてら走って来ていた。


「蝉の鳴き声、凄いですね。これってお二人を歓迎してくれてるのでしょうか?」

「ははは! これは嬉しい事だな」

顔の汗をふいた杏寿郎は、七瀬から竹筒を受け取るとゴク、ゴクと中に入っている水をゆっくりと喉に流しこんだ。

槇寿郎も同様に顔から流れる汗を手拭いで拭き、千寿郎から水が入っている竹筒を受け取ると、喉の渇きを潤していく。


「今日は暑いし、一本だけにしておきますか?」

水分補給が終わった二人に問いかけた七瀬は、自分も麦茶を一口飲み、杏寿郎と槇寿郎の返答を待つが ——


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