第35章 心炎八雲、今宵も甘えて混ざりあって ✳︎✳︎
「いますよ、杏寿郎さんが嫌だと言うまで」
「そんな事を俺が言うと思っているのか?」
もちろん彼は言わない。これは私の照れ隠しだ。
雨がポツ、ポツと地面にゆっくりと落ちるように。
口付けが私の顔の至る所に落ちた後、彼の額が私の額にコツンと当たる。
そこから伝わって来るのは、あたたかい杏寿郎さんの体温だ。
「くすぐったかったあ…」
「そうさせたのは君だろう?」
互いに笑顔を交わすと、また彼は口付けをくれる。
「えっ? 今日もやるんですか?……」
「ああ、やるぞ! 新しい事をやると脳が活性化するそうだ」
先程のやりとりがひと段落した後、彼は私ににある提案をして来た。それは何かと言うと ———
「杏寿郎さん…これはちょっと…あ、…んっ」
「後ろから君を愛でる事は今までもあったが……」
「や、お尻撫でちゃ……だ、め…」
「立ってまぐわうのも、良いのではないか?」
鏡の前に立って欲しい。
最初はそんな要求をされたのだけど、これは【恥ずかしすぎるから絶対に嫌だ】と却下した。
無理、無理!!
そんな事したら恥ずかしさで気絶するもの。
でも意地悪な彼はそれが目的なんだろう。今度は硝子窓近くの壁に向かって、両手をついて欲しいと提案して来たのだ。
これも凄く躊躇したけど、さっき断ってしまった私は負い目もあって、了承をした。
何をされるのかドキドキしていると臀部が大きな両手で撫でられ、揉み込まれる。
普段あまり触れられる事がない為、ぶるんと体が震えてしまい、そんな私を見ているだろう彼が、ふっと笑ったように感じた。
「七瀬」
「んっ……だから、おし、りは」
「…ここなら良いのか」
「あぁっ、んっ」
左手が臀部から外れ、腰の曲線を撫で上げられる。ゾクゾクと体が震えるけど、嫌な感触じゃない。
「いつ触れても、ここは柔いな。む? また大きくなったか」
「あなたが…いつもこうやって触るから…」
その後も自分で指圧してるもの。
少しでも喜んで貰いたいし、何より彼に触れて貰うのがやっぱり好きだから。