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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第7章 緋(あけ)と茜の初炎武(えんぶ)



九月下旬、雲一つない晴天の昼下がりの事だ。

七瀬と杏寿郎は煉獄邸からニキロの距離にある川のほとりに準備運動がてら、走って来ていた。これは以前実施すると言っていた特別稽古である。


「天気も良くて申し分がないな。今日の稽古だが、俺から一本。又は体のどこかに当てたらよしとする。木刀とは言えど、もちろん容赦はしない……俺を殺すつもりで来い」

七瀬に木刀を渡す杏寿郎だ。

「……はい」

彼女はゴクっと唾を飲み込みながら受け取る。そしてお互いに一礼をして得物を構える。

『師範、いつもと目が全然違う……本気だ』

七瀬の目をじっとそらす事なく、見据える杏寿郎はフッと笑い声をかけた。

「どこからでもかかって来て良いぞ!」

自分の闘気を少しずつ練り上げていく師範。
足元からジワリ、ジワリと熱風が体に上がって来ると同時に、金色の髪がふわっとはためく。
そして彼の周りには陽炎がゆらり、ゆらりと揺らぎ始めた。


『すごい熱風だな、木刀でもこれだけ闘気が練り上げられるなんて。流石は炎柱……』


継子もすうっと息を吸い、目の前にいる杏寿郎を見据える。
目をつぶって、自分の中にある闘気を解放するように思い描くと、彼と同じようにじわじわと足元から熱風が上に上がって来た所で、目を開ける。


『よし、これで準備は出来た』
『さて、どの型から攻めてくるか……』

杏寿郎は引き続き闘気をじわじわと出したままで、七瀬を見据えている。


『きっと何を出しても、師範には見切られる。だったら基本に立ち返って………』

「全集中 ——— 炎の呼吸」

七瀬は呼吸を整えた後、右足を後ろに下げ、踏み込む姿勢になる。

『基本に戻る、と言う事か。では……』

杏寿郎も呼吸を整え、集中力を高める。すると纏う闘気がより一層眩い物になった。

「炎の呼吸 ———」


「壱ノ型・不知火」

七瀬は腰と足を一度グッと落とした後、思いきり地面を蹴り、一気に杏寿郎との間合いを詰めた。

「弐ノ型・昇り炎天」

七瀬の木刀が繰り出す烈火の薙ぎ斬りを時計回りの方向に振り上げて回避する……が。

『なるほど、まだあるか……』

杏寿郎が察した次の瞬間 ——七瀬が再び不知火の型を放つ体勢に入る。

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