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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第35章 心炎八雲、今宵も甘えて混ざりあって ✳︎✳︎



「七瀬」

鼓膜を心地よく震わす、低くて艶っぽい彼の声。
杏寿郎さんに名前を呼ばれる度に、いつも胸が高鳴るけど安心もする。

右耳にちうと一つ柔らかな雨が落ちた。ふるっと体が揺れるのは心地いいから。言わなきゃ……

「たくさん…触れて…下さい……」
「やはり素直な君は、たまらなく可愛いな」

再び彼の両手をが動き始めると、自然とこぼれるのは吐息と声だ。









私はその後、杏寿郎さんの手の愛撫だけで一度気をやった。
触れられるだけではなく、彼の思いがこもった動きに自分の体が反応してしまったのだ。

今は布団に隣り合って寄り添っていて、私の髪に触れているあたたかな感触は恋人の大きな手なのだけど。


「杏寿郎さんの意地悪……」

いつもこう。
彼は普段とても優しい人だけど、情事の時は奥底に秘めている加虐心を露わにする。

「俺は七瀬にそう言って貰うのが好みのようだ」

はあ、これだもの。杏寿郎さんにとって【意地悪】と言う形容は褒め言葉になっているみたい。
顎が柔らかく掴まれると同時に、また彼の思いがこもった口付けが届く。

自分の唇があたたかな唇で挟まれると、ちうちうとかわいい音が響いていく。口付けだけで胸いっぱいになった私は、一体どんな顔を彼に見せているのだろう。

「すまんな」
「…いえ」

左頬を一度撫でられるだけで、もっと杏寿郎さんに触れてほしい気持ちがふつふつと上昇を始める自分は本当に弱いなあと思う。

でも仕方ない。だって私は彼の事が大好きなのだから。



「あの…お願いがあります」
「どうした?」

言えるかな、恥ずかしいけど…。彼の背中に腕を回したまま、顔だけ上に向けて伝えていく。


「……る…を」
「?…もう少しはっきりと言ってほしいのだが…」

両頬をそっと包まれ、日輪の双眸が私の両目をじいっと至近距離で見つめる。これ……言うまで離してくれないんだろうな。


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