第31章 青柳色の君からの贈り物 〜さつまいもの甘味と共に〜
「わかりました。でも寝てて下さいよ、きちんと」
「ああ、わかった。六つ目の贈り物はその時に頂くとしよう」
柔らかな口付けを七瀬に降らせた後、口元に笑みが浮かぶ。六つ目、と言うのはもちろん ——
「それってその……」
「君が考えている事で合っているぞ」
顔の表面温度が上がったらしい。頬を真っ赤に染めた恋人は目を瞑って下を向いてしまった。
「もちろんどの贈り物もとても嬉しかった。しかし俺は…君に触れて、君と繋がれる事が何よりも嬉しいし、幸せに思う」
左の耳元にそんな言葉を届けたのち、小さな顎を掴んで顔を俺に向けた。そこにははにかんだ七瀬の笑顔があった。
多幸感に包まれながら、彼女との口付けを約一時間程楽しみ、任務に向かう七瀬を父と弟と共に見送った。
恋人が帰宅したのは、日付が変わった早朝の事。
襖が静かに開く音で目が覚めるが、瞳は閉じ、引き続きじっと寝たふりをする。
布団に近づく気配を間近に感じた所で、ぱちりと双眸を開くと、七瀬の表情が綻んだ。
いつかと同じように「おいで」と手招きすれば、自分の隣にスルリと入り込んで来る。
「お待たせしました…」
「お帰り、七瀬…やっと君に触れられる」
まだ薄暗い夜明け前。
俺は一日遅れで全ての贈り物を受け取る事が出来た。彼女の体のいたる所に落とした優しい雨は、小さな赤い花に育ち、それが俺の支配欲をまた駆り立てる。
昨日の朝、塗った緋色と橙色の爪先にもたくさんの口付けを贈った。来年も再来年も青柳色の君とあたたかな誕生日が過ごせる事を、心から願いながら。
「おはよう、良い朝だな! 稽古をするぞ」
「おはようございます、杏寿郎さん。はい…今日も頑張ります」
俺は今日も七瀬と朝の挨拶を交わし合った。