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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第29章 褒められ日和に、橙が咲く ✳︎✳︎



四月も終わりに差し掛かり、初夏の陽光へと太陽が変化して来た。
そんなある一日。
俺は七瀬と共に朝の稽古をやっていた。

攻めてくる彼女の太刀と受け流す自分の太刀が、心地よく混ざり合う。

カンカンカン ——— …


「炎の呼吸・漆ノ型」
『む…完成したのか』

目の前の継子が、未知の型を放つ準備に入る。一体どんな型なのか、まだ見ぬ技だ。ドクンと心臓が弾む中、それは放たれた。


「——— 紅蓮業火!(ぐれんごうか)」

七瀬の前で反時計周りに太刀が動く。
現れたのは激しく燃え上がる炎の輪だ。前方へ押し出すように、木刀が突き出される。


「炎の呼吸・壱ノ型 —— 改」

不知火の連撃で応戦した。
通常よりも腰を深く落とさないと、この改変は非常にやりにくい。
左右に振った木刀より舞う二つの炎。これで漆ノ型を相殺する。

眉間に皺を少し寄せた七瀬。さあどうするのか。
一瞬の【間】の内に彼女は水に呼吸を切り替えた。


「肆ノ型・打ち潮!」
「弍ノ型・昇り炎天!」

水と炎。対照的な型を出し合った後は再び、打ち合う俺達だ。

——— 隙あり。

バシッと太刀を弾くと、七瀬の両手から木刀が宙に舞う。
カラカラと乾いた音を出しながら、それは地面に落ちた。


「……参りました」
「よし、今日はここまで」
「ありがとうございます

互いに一礼をした後、七瀬がこちらに駆け寄って来る。
剣士から恋人になる瞬間の顔が、いつもながら愛らしい。


「お疲れさまでした、杏寿郎さん」
「お疲れ、七瀬…完成したのだな。見事だった!」
「ありがとうございます」

頭にポンと掌を乗せると、更に口角が上がる。彼女の機嫌がもう一段階上昇したようだ。


「木刀は俺がしまおう。その後はいつものあれを頼む」
「わかりました。ではこれをお願いします」


木刀を受け取り、普段立てかけてある場所へとしまった後は縁側に向かう。





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