第26章 七十ニ時間分の恋慕 ✳︎✳︎
「なるほど」
含み笑いをした後、彼女の左右の薬指を順番に刺激する。やや強めに、だ。
「もう……何するんですか?」
「いや、先程と同じで良い事を聞いたと思ってな」
しばらく待っていると、彼女の顔にほんのり赤みがさして来た。よし、上手くいったか。そうして俺は彼女の愛液が溢れたままの出入り口に、するりと二本の指を入れる。
「あ、ん」
「君と話すのはとても楽しいのだが、そろそろこちらも良いか?」
再度愛らしい声を出す七瀬。
一度ゆっくりとかき混ぜると、彼女の中がきゅっ…と締まる。
「……体でも、君と会話をしたい」
更に蜜壺の中をかき回すと、途端に目の前の恋人は蕩けた顔を見せ始めた。
「あ…すみません…」
「どうした?」
空いている左手で彼女の柔らかな右頬をそっと包んで撫でる。
「会話は…出来ないと…あん…思います」
「何故だ?」
七瀬……理由を教えてほしい。
「杏寿郎さんに…んぅ…溶かされそうですから」
「……そうか。では…互いに溶け合うとするか」
夜が明けるまで ———
それから彼女を布団にゆっくりと押し倒しながら、口付けを贈る。
熱い舌を七瀬の舌に絡めると、お互いの息が混ざり合い、水音が艶っぽく響いた。
「杏じゅ、ろう……さん……」
「んっ、どうした」
彼女の心臓がドクドクと脈打つ音が、重なった肌を通じて響く。
「私もあなたに、気持ちよくなってもらいたいって……思うん、ですけど」
…………!その言葉に自分の動きがぴたりと止まった。
「それは嬉しい申し出だが、無理はしなくても大事ないぞ?」
「いつも大事にしてもらっているので、お返ししたくて……」
彼女の頭をいつも通り撫でているとこんな事を言って来る。断れないな、君に言われてしまうと。