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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第5章 君は継子で、俺は師範


沢渡が我が家にやって来た翌日。

彼女の師範となった俺は稽古を早速開始した。
座学、柔軟、瞑想、走り込み、基礎運動、見取り稽古、掛かり稽古、地稽古を一通りやった後は…


「よし、良いだろう」

沢渡は片足立ちをする為に上げていた左足をトン、と地面に下ろすとその場に座りこんだ。

右足も先程同じように上げて立っていた為、汗が顔からジワッ……と垂れる。それらは彼女が着用している道着に染みこんでいく。
これは自分と揃いの紺色だ。


「稽古の時も感じたが、体幹は思った以上にしっかりしているな。重心も安定するから常に視野は広く保てる、と言う事か」

桐谷くんが存命していた時、どうやら体幹について指摘されていたらしい。足捌きと同様に鍛錬していただけあって釣り合いがなかなか良いと感じた。


「しかし、君は速さと技術はなかなかだが、力がやや弱い。女子だから仕方のない事だが、筋力が重要になる炎の呼吸に至っては分が悪いぞ。よって……」


俺が提案したのは普段の稽古に加えていくつかの筋力強化についての稽古だ。

筋力を上げるには蛋白質(たんぱくしつ)が多い食品を摂取するように…と胡蝶へ相談した時分、助言を受けたようだ。
以後、肉類、魚類、に加えて大豆類を使用した料理を自宅の食卓に出す事が多くなったとも聞いた。

この二つに加えて俺が必要だと感じ、取り入れた物。
それは ——


バタン!バタン!バタン!

道場に気持ちよく響いた三つの音。四角いちゃぶ台を挟むように座って、右肘をつき、更にその先にある右手を互いに掴んでいる。

腕相撲だ。


刀に限らず、何かを握ったり掴んだりする時、親指に入れる力がとても重要になり、腕相撲においてもそれは言える。

日輪刀の重さは約一キロ。
持ってみると筋がピン!と伸びる感覚に加え、ずっしりした重さが腕にかかる。これを自在に振って攻撃するには相応の腕の筋肉が必要になる。

以上の理由から俺は締めの稽古として、彼女と腕相撲をする事になったのだが……。

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