第4章 茜の炎が芽吹く時
「君に聞きたい事がたくさんある!まずはだな……」
「わっ、ちょっと煉獄さん。顔近いし、肩が痛いです!!それにお館様も見ていらっしゃいます……」
ずずいっと隣の沢渡少女に距離を詰め、尚且つ両肩をガシッと掴む。
するとパシパシと右腕を軽く叩かれた。
「君達は本当に仲が良いんだね」
「いえ、あのお館様。これはあくまでも師範と継子ですから…」
「お館様!それでは積もる話もあります故、これで失礼致します!!」
「うん、じゃあ七瀬。頑張ってね。杏寿郎、頼むよ」
「御意!」
こうして鬼殺隊の当主と奥方が見守ってくださる中、沢渡少女と俺の“師範と継子”の関係が始まった。
★
隠に背負われ、我が家に帰宅した俺達はまず父上へ継子がこれから出入りする事、それから稽古を開始する事を伝えに行く。
予想通りあまり良い反応は頂けなかったが、沢渡少女へは父の事を前もって伝えていたので、そこまで衝撃は受けなかったようだ。
「煉獄さん……来てしまってこんな事を言うのもあれですけど、本当に良いのですか?」
玄関で俺達を迎えてくれた千寿郎に改めて彼女を紹介する為、廊下を歩いている時にそう言われた。
「構わん!父はあの通り、俺や千寿郎の行動に興味は示さない。故に家の住人が一人増えた所で問題はあるまい」
「わかりました。じゃあ……」
彼女は明日から父の朝食を自分が運びたい—— そんな提案を申し出て来る。
「お二人のお父様ですから、何もしないわけにはいきません。って言っても思いついたのがこんな小さな事で申し訳ないですけど……」
「いや、気遣い感謝する!では早速明日より頼む」
「はい!」
やはり笑う沢渡少女を見ると、心があたたかくなるな!
同じ呼吸を使う彼女と過ごす日々。それは本当にかけがえのない物となっていくのだ。