第4章 茜の炎が芽吹く時
「カアー!杏寿郎サマ、お館様カラ文デス!!」
「要、ありがとう!」
相棒がいつものように手紙を届けに来た。お館様からだ。柱合会議はほんの一か月前に済ませたばかりだが、果たして?要の脚からくくりつけてある文を取り、目を通す。
「また柱合会議か!!」
前回の柱合会議では鬼を連れた隊士の処分について皆で話し合ったばかりだ。今回は一体どんな案件だと言うのか。
それから一週間後、俺は鬼殺隊本部へやって来た。しかし——
「む!!何故誰もいない??」
バサバサバサ……と木に止まっていた鳥達が一斉に飛び上がる。
普段なら他の柱の姿が見えるはずなのだが…おかしいな。
「煉獄さん!」
瞬間 ——— 東屋から誰かが飛び出し、自分に駆け寄って来る。
「よもや……沢渡少女か?何故君がここにいる?」
隊服の上に纏っているのは青柳色の羽織り。焦茶色の双眸、そして瞳と同じ頭髪の色。俺と違いその髪は短く、肩より上までの長さだ。
「あの!煉獄さん、お手紙って読まれましたか?」
「手紙?」
さて何の事だ?脳内にはたくさんの疑問符がひしめき合っており、その量の多さに首を傾げてしまう。
しかし、疑問符の中から一つの確信を見つけ出した俺は「ああ……」と思い出したように声を発し、胸元の衣嚢(いのう=ポケット)から一枚の紙を取り出した。
「これなら届いたぞ」
目の前にいる彼女に渡すと、瞬時に眉を顰める。
何だ?どうかしたのか?
再び疑問符が自分の脳内を充満する中、沢渡少女は四谷怪談のチラシを見ながら、戸惑いの声を発した。
長めの沈黙が俺達に訪れる。
どうやら頭の中の思考を整理しているようだ。これは不用意に言葉を発しない方が良いな。
しばらく待っていると納得出来たのだろうか。
目線を俺に向けたかと思うとため息をつく。それから「ごめんなさい、間違いです」と頭を下げ、自分に謝罪をして来た。