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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第1章 緋(あけ)と茜の始まり



「杏寿郎サマ!応援要請デス!至急向カッテ下サイ……!」

「承知した、案内してくれ!」

今夜の任務が終わり、家路を急いでいる時の事だ。小腹がすいた為、行きつけの蕎麦屋に向かおうと右足を踏み出そうとすると、慌てた様子で相棒の要から声をかけられた。


十二鬼月が出現したらしい。


隊士が八人程先発で向かったが六人やられ、残り二人が応戦しているとの事だが、どうにも分が悪いと言う話だ。
二人の内、一人は以前任務で何度か一緒になった事がある桐谷くんだと聞いた。穏やかだが、意志は強く剣技もなかなかに素晴らしい。


もうすぐ鳴柱になると先日報告を受けたが、彼は十二鬼月との対戦がまだないと言っていた。



どうか……どうか、無事でいてくれ———


目的地の途中にあった森を一旦抜けると、広い更地に出た。
やられた六人の隊士は首を胴体から切り落とされていたり、四肢を噛みちぎられていたり、内臓を引きずりだされていたり……と元の原型をとどめていなかった。


隠はまだ到着していない。
桐谷くんはどこだ?
鬼の気配が完全にない事を確認すると、俺は彼を探し始めた。


「う……」
「大丈夫か?」

自分が今いる場所より後方三メートル程の距離から声が聞こえた。
向かってみるとそこには何回か吐血をして、ほとんど虫の息と言う状態の隊士がいた。
青紫色の羽織りを着ているので桐谷くんで間違いなさそうだ。


「その声……炎柱……ですか」

「ああ、そうだ。しかし君はそれ以上喋らない方が良いのではないか?」

吐血した量、息がしづらそうな状態から察するに彼は残念ながら助からないだろう。

「いえ、お伝えしないといけない事が……あるので……聞いて……ください………」

「わかった。話を聞こう」

俺は彼の傍に片膝をついた。

「……青柳色の羽織りの……隊士は……近くに……いますか」

周りを見回すと、そう離れていない所に該当する隊士と思われる人物が確認出来た。


「ああ、気絶しているだけのようだ」
「良かっ………た」

桐谷くんは心から安堵していた。

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