第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
「…七瀬」
「杏寿郎さん………!」
「………」
「………」
「七瀬」
少し強めに名前を呼ばれた七瀬は、ゆっくりと頭を上げる。
「はい……」
「今、任務中だと言う事を忘れていないか?」
「あ、すみません………」
杏寿郎に諭されるように言われた彼女は、パッと彼から離れる。
「どうした、何があった?」
「はい……」
それでも炎の柱は彼女を安心させるように問いかけ、継子の頭にぽんと柔らかく掌を乗せた。
七瀬の両目尻に涙が滲むが、杏寿郎に無事に会えた安心感から落ち着いて自分の身に起こった出来事を話していく。
「俺もだ。横にいた君と話していたんだが、急に呼び捨てで呼ばれてな。即座におかしいと思って様子を見ていたら、炎の蛇から攻撃された」
「そうだったんですね………私は水を操る蛇でしたよ。何だか心を試されているようでした」
「そういう血鬼術だったのかもしれないな……と言う事は少年達も同じ目に合っていると言う事が考えられる。君は地図を持っていたな」
はい……と頷きながら、七瀬は胸元の衣嚢(いのう=ポケット)から先程も確認した地図を取り出し、杏寿郎と共に開く。
「今、俺達がいるのが社殿の裏手か。少年達が向かっていった方角から察するに……ここが怪しいな。行ってみよう」
炎柱は右手人差し指で、地図の楼門に当たる所をトントンと指した。はい、と頷いた七瀬は地図を胸元の衣嚢に入れ直す。
「杏寿郎さんが無事で良かったです」
「俺も君が無事で安心した! しかしまだ敵は倒せていない。気を抜くなよ」
「はい! 」
そうして二人は、四人がいるであろう楼門に向かった。