第3章 花浜匙(はなはまさじ)の繋がり
「では行くか」
「はい!」
それから墓地の出入り口までの短い時間、彼女は俺に先程渡してくれた手紙の内容を全て話してくれた。
「すみません、何だかこの話は直接お話したくて……手紙書いた意味がなくなっちゃいました」
「気にするな!そう言う事はある」
右横を見ると、彼女の顔が少し赤かった。その様子を見た俺は再び”愛いな”と感じてしまう。
むう、よくわからんな。何故こんな感情が湧いて来るのだ??
脳内が疑問符で埋め尽くされようとする中、彼女に「その着物、よく似合っているな」と自然と口からそんな言葉が出てしまう。
「え、あ……」
“ありがとうございます”
戸惑いの反応と共に、沢渡少女からやや遅れて発せられたお礼の言葉。
……やはり愛い。一日に三回も同じ相手に同じ感情を抱いてしまった。
不透明だった “愛い”が少し純度を増し、自分の心にじわりじわりと染み渡っていく。
あたたかく、どこか気恥ずかしくもあるこの気持ちはよもや……?
しかし、俺がこの感情の正体をはっきりと自覚するのはまだ少しだけ先だ。