第3章 花浜匙(はなはまさじ)の繋がり
「煉獄さん、お待たせしました。スターチス三色です」
「うむ!今日も綺麗な花を用意してくれて感謝する。ありがとう」
「いえいえ。こちらこそいつも贔屓にして頂いてありがとうございます」
「ではまた来月頼むな」
「はい、お待ちしています」
今日は桐谷くんの月命日だ。
彼が亡くなった次の月から墓参りへと足を運んでいる。母・瑠火がよくこの店の花を生前購入して、自宅で飾っていた。
そんな縁から俺はここで花を買い、彼の元へ行っている。
店の名前は「久住生花店」で、先ほど対応してくれた少女はこの店の看板娘だ。
ここから鬼殺隊の共同墓地は割合近いと言うのも、利用している理由の一つでもある。
歩いて数分 —— 墓地へ到着した。足を踏み入れる前に、入り口で羽織を肩から外して右腕にかける。
そうして目的の場所へと向かっていくと今日はどうやら先客がいるようだ。
む……あれはよもや??
「おはようございます」
彼女は俺に体を向け、会釈をしながら挨拶をしてくれた。
「……沢渡少女か?」
そう声はかけたが、果たして合っているのか。彼女ではあると思うが、青紫色の着物を着用している為、いかんせん雰囲気がちがうように見受けられるからだ。
自分のそんな様子が向こうに伝わったのだろう。彼女は「そうですよ」と笑うと、ゆっくり立ち上がった。
「おはよう、ここで会うのは初めてだな」
「はい」
「供えても良いか?」
「お願いします」
彼女が左に移動したので、墓石の前に立つ。
すると沢渡少女が「持ちましょうか?」と声をかけてくれた。右腕にかけている羽織の事を言っているのか。
気遣いをありがたく感じた俺は、沢渡少女に預ける。
自由になった両手で花を供え、墓前に手を合わせた。
毎月の報告 —— と言っても取り立てて変わった物ではない。どんな鬼を討伐したか、弟とこんな話をした等の日常の話だ。