第16章 晴れた霞に心炎嫉妬をする、の巻。
七瀬と胡蝶の試合が終了して三十分と少し経った頃、まず胡蝶が宇髄の奥方と戻って来た。
今、俺達は昼食を皆(みな)で食す為に大広間に集まっている。
十五畳程の部屋には座卓が二つ置かれており、自分が座っている側には俺の右横に冨岡、甘露寺、伊黒が。
向かい側には左から栗花落少女、時透、宇髄、宇髄の奥方三人が座っている。悲鳴嶼殿と不死川は所用の為、本日は不在だ。
「煉獄さん、七瀬さんはもう少し休憩されるそうです」
「承知した!! 今日は我が継子と試合をしてくれてありがとう! 改めて礼を言わせてくれ」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。お陰様で充実した時間を過ごせました」
部屋に入ると、まず俺の所へ来てくれた胡蝶は立ち上がる前にもう一度礼を言うと、座卓の向かい側へ足を進める。それから更に十分経過した所で、襖がスッと開かれた。
「お待たせしました」
「肩は大丈夫なのか?」
入室すると俺の左横の座布団に腰を下ろした七瀬の表情は、とても晴れやかだ。
先程胡蝶から言われた言葉が反芻する。充実した時間が過ごせた、と。再び俺の胸がほんのりとあたたかくなる。
「ありがとうございます。まだ痺れてますけど、十分冷やしましたし、湿布も貼ってますよ。長引くようなら、またしのぶさんに診てもらいますから」
「そうか! であれば安心だ!」
座った七瀬は部屋の中をぐるっと見まわした。
瞬間、あっ…と言う声が彼女より発せられた。
「杏寿郎さん、すみません。ちょっと台所に行って来ても良いですか?」
「ん?構わないが」
これが俺の行く末を分けたのかもしれない。ここで了承の意を示さなければ ———
「あれって確か時透さんの好物ですよね?少なくなっているみたいなので取りに行って来ます」
「承知した!」