第15章 紫電・心炎の想い / 八雲の踏み込み・蟲の戯れ
初めて七瀬と出かけた日から三週間後の朝の事だ。
「俺を紹介、か?」
「はい。巧は柱としての杏寿郎さんはよく知っていると思いますが、恋人として彼に紹介したいんです。ちゃんと前に進んだよって事も伝えたくて」
「承知した。俺も是非行きたい」
—— と言う事で、俺は七瀬と共に桐谷くんの墓参りへやって来た。なかなか互いの予定が合わなかったが、午後から宇髄宅で集まりがあるこの日の朝はどうにか時間が確保出来た。
まずは墓の掃除だ。それが終わると、ここに来る前に購入した三色のスターチスを供え、俺達は手を合わせた。
『桐谷くん、今日は大切な報告がある故にここへ七瀬と来たぞ』
目を開けると、まだ彼女は瞳を閉じていた。
やがてゆっくりと焦茶の双眸が開き、自分と視線が絡む。
「紹介するね、恋人の杏寿郎さん。巧もよく知ってると思うけど…凄く優しくて強くて、心から尊敬出来る人です。縁があってお付き合いする事になってね。私、とても大事にしてもらってるんだよ」
「桐谷くん」
彼女の左手をそっと繋いで、ゆっくりと声を発した。
「君が命をかけて七瀬を助けてくれたから、彼女と会えた。本当にありがとう。お館様も言われていたが、とても良い鳴柱になっていたのだろうな。俺もそんな君が見てみたかった」
瞬間、七瀬の両目から涙が溢れて彼女の頬を通り抜ける。
俺は繋いだ手に少しだけ力を入れた。
「良かったね、巧。炎柱様から最大の褒め言葉を貰ったよ。幸せだね」
流れる涙を右手の指で一生懸命、雫を取り払う七瀬だ。
「本当に見たかったなあ……鳴柱になった巧を」
「………」
俺は握っていた彼女の右手から自分の左手を外し、そのまま恋人の頭にポンと乗せる。