第13章 浅緋(あさあけ)、君に口づける ✳︎✳︎
嫉妬 —— と捉えて良いのかな。
どうしよう、少し嬉しいかも。ほんのりと私の心があたたかくなっていく。
「杏寿郎さん、そろそろ起きませんか?」
薄暗い外の様子がいつの間にか明るく色づいている。稽古もやらないといけないしなあ。でも、まずは湯浴みしたいな。
「そうだな。湯浴みするか」
「え?」
ちょうど頭の中で考えていた事を言われるものだから、びっくりした。
「あ……じゃあ杏寿郎さん、お先にどうぞ。私、用意してきますから……」
「何を言う?君も一緒に行くぞ」
私が散らばった衣服の中から下着と寝間着を手に持つと、彼はフッと笑いながら、私の頭にポンと手を乗せる。
「えぇ、恥ずかしいんですけど……」
「もうお互い全部みただろう?今更言う事ではないと思うが」
いや、確かにそうなんだけど、明るい所で見られるのはまた別の恥ずかしさがあるんですよ!!
「よく見える所で恥ずかしがる君もかわいいだろうな」
「どうして私の考えている事がわかるんですか?」
正に!
正に今!心の中で思っていた事を言われ、頭から湯気が出そうな気分だ。私は杏寿郎さんの考えがわからない事も多いのに……何だか悔しいな。
「どうしてわかるか、か。そうだな……君の事をいつも見ているからだろうな。今は嬉しいのか、怒っているのか、悲しいのか、楽しいのか。それらをよく考えているぞ」
……本当にこの人には敵わない。
この感情はこの先ずっと私について回る事になる。
✳︎七瀬から見た景色✳︎
〜終わり〜