第2章 炎柱・煉獄杏寿郎の息吹
鬼はあっという間に体を崩し、サラサラと砂塵になりながらその姿を消していく。
「はあ、はあ……」
そんな中、杏寿郎は血を流しながらも歩こうとする。仕掛けられた爆弾を解除しなければいけない為だ。
『まだ倒れては、ダメだ……どこだ?どこにある……』
しかし、体はなかなか言う事を聞かない。ふらふらと足元がおぼつかない所へ、ガシッと力強い腕が二本彼を抱き止める。
「やった……!十二鬼月を倒した!これで煉獄さんは柱に……!」
彼の継子であった甘露寺蜜璃が感慨深く言葉を発する中、周囲にいる隊士が杏寿郎から離れるように説得する。
が、蜜璃はなかなか動かない。
「わあああああん!良かった……本当に良かった!」
「おい!!いい加減離せ!煉獄さんは出血が酷いんだぞ!死んじまう……!」
「はっ!すみません!」
「隠が来たぞ!早く処置を……!」
蜜璃は数人がかりで引き剥がされ、杏寿郎が治療を受ける姿をしばし見守った。
『煉獄さん……私、自分の型をようやく見つけましたよ!』
蜜璃は以前から鬼殺隊に向いていないのではないかと悩んでいた。
しかし、今回の任務で自分の居場所を。
そして彼女だけが使える恋の呼吸を獲得した。
蜜璃にとってこの戦いは、己の殻を打ち破る貴重な経験となったのだ。
「よし!応急処置出来たぞ。蝶屋敷に搬送だ!って、甘露寺、お前も足から血が出てんじゃねえか!早く治療してもらえ」
「あ、本当だ。全然気になりませんでした……」
杏寿郎はこの功績が認められ、その後の柱合会議にて炎柱の称号を与えられた。
そして先代の炎柱を務めていた父・槇寿郎へその報告に出向くのだが、彼を待っていたのは……
「父上!柱になりました!!今日より更に精進して、鬼殺に励んでいきます!」
「…………らん」
「申し訳ありません、もう一度聞かせて頂けますか?」
瞬間、槇寿郎の纏う空気が変わった。