第13章 この心にいつも浮かぶのは
さて、待ちに待った夜伽の時間。
逸る心を静める様に、私はバルコニーで夜風に当たっていた。火照った体に心地いい風が吹く。
「ルー様?」
それは、か細く小さな声。部屋に人の気配を感じたのは分かっていた。でも、今、この滾る気持ちのまま顔を見てしまったら・・・。
私の背後に近付いて来ては、背中から腕を回された。甘い匂いと共に柔らかい感触。心臓が忙しく動き、どうも落ち着かない。
「・・・心臓が、口から出そうです。」
背中に感じる、カオリの鼓動。私に負けず、激しいものだ。
「カッコ悪いが、私もだ。」
「ルー様も?それを聞いて、少し安心しました。」
私はカオリの腕を解き、振り返った。目の前に立っていたのは、薄い夜着だけを身に纏った姿を見て思わず息を飲んだ。
「美しいな・・・。」
思わず零れた言葉だったが、カオリの小さなクシャミで現実に戻る。
「このまま居れば風邪をひく。中に戻ろう。」
カオリの背を押し、部屋に戻れば月の光だけが辺りを照らす空間となっていた。
「私を受け入れてくれるか?」
「・・・はい。」
ベッドの上に横たわらせ、私はカオリの上に覆い被さった。忙しく鼓動を打つ心臓だが、もう気にならなくなっていた。
カオリの瞳を見詰めれば、恥ずかしそうにしながらもしっかりと見つめ返してくれた。重ねた柔らかい感触を思うだけ堪能し、私たちはシーツの中に沈んだ。
何処を舐めても、何処に触れても甘く柔らかいその肢体に憑りつかれた様に味わった。
特に甘い蜜が溢れる中は、私の全ての意識を奪ってしまう程の高揚する時間。何度も欲の滾りをぶつけては、全てを注ぎ込む。
「なぁ、このどうにも止められない衝動をどうすればいい?」
「止めないでください、ルー様。全部、私にください。」
「そんなに私を甘えさせて、後で後悔しないか?」
「あ、後で後悔するかもしれませんけど・・・今はしないので大丈夫です。」
潤んだ瞳で私を受け入れると言ってくれた妻に、私はそのまま溺れる事にした。初夜を我慢したご褒美だと思おう。
それは辺りが景色を取り戻す時間まで、私は多大に甘やかせて貰った。すっかり抱き潰してしまい、カオリは疲れで眠っている。
そんな妻の頬にキスしてから、私は自身を妻の中から引き抜いた。そして、私も疲れからそのまま寝落ちしてしまった。