第13章 この心にいつも浮かぶのは
指を絡め私たちは、約束通りに散策に出掛けた。オリバーや使用人たちに生暖かい目を向けられているのは気付いているが、どうも正気に戻れない。
そんな時、木の根っこで躓いた妻を抱き留めた。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます、ルー様。」
照れ臭そうに笑う妻。
「少し休もう。」
木陰の中、地面に座る私。妻は私の膝の上だ。大人しく私に身を委ねてくれている。穏やかで幸福な時間。
妻の髪を撫で、頭に口付けを落とす。そうすれば、妻は私を見る。
「口、開けろ。」
その顎を掴み、妻の口の中に舌を入れ絡ませる。お互いに求めあい、抱き合った。そんな時間も夕日が消える前に終え、別荘に戻ってはカオリが考案した食事を楽しんだ。
夕日が美しかった前日だったが、翌朝はしとしとと雨が降っていた。山間部のこの地は、雨が降れば肌寒い。私に寄り添い眠ったままの妻。
「・・・雨?」
「起きたのか。そうだ、今日は雨が降っている。寒くないか?」
「ルー様が温かいから大丈夫です。」
「もっと、温まることしていいか?」
率直に言って、抱きたいのだから仕方ない。でも、きっと断わられるだろう。
「ルー様も、温まりたいですか?」
「ん?あぁ、そうだな。今日は肌寒い。」
「じ、じゃあ・・・お願いします。」
お願いされてしまった。
「い、いいのか?たぶん、途中で止められないが。」
「昨晩も・・・本当は、我慢したのでしょう?」
「それは・・・。」
「いいじゃないですか。新婚なんですもの。」
そう言って妻から触れられた唇。その後の事は、よく覚えていない。
そう、新婚なんだから・・・。妻も私を求めてくれている。肌を重ねる日々を送った二週間。
艶やかな肌の妻と、すっかり妻から離れられない私が出来上がった。すっかり手綱を握られてしまった私だったが、両親も同じだから血筋だから仕方ないと思うことにした。
この後、計画通りというか私の子を成した妻。国は繁栄し、夫婦仲も良好。数年後、賑やかで騒がしいが誰もが幸せな日々を過ごす。
「・・・はっ?」
「ですから、ご懐妊だそうです。」
「五人目か。増々、頑張らなくてはな。」
必然的に、このやり取りも五度目だ。家族の笑顔を、国民の笑顔を守れる国王にならなければ女神様に顔向けできないな。
今は、この幸福に感謝を。