第13章 この心にいつも浮かぶのは
魔力を頼りに足を向ければ、ある石碑を見ている妻に辿り着いた。石碑に触れ、文字を読んでいる。
「こんなところに居たのか。」
「ルー様、ごめんなさい。何故か、ここに導かれて。」
妻の隣りに立ち、その石碑を見た。
「ルー様は、女神様の末裔だったのですね。」
「あぁ、そうだ。」
「知っていたのですか?」
「いや、昨日、父上から聞いたばかりだ。」
だからこそ、女神の代理人との仲を父上は最初から反対しなかった。
「血は争えないと言うことか。当時の国王と王妃がここで眠っているらしい。初めて出会ったのが、この場所だったそうだ。」
「そうでしたか。素敵ですね。」
緑茂る森の中、寄り添って眠る二人。手を合わせて、私たちはその場を離れた。
皆の所に戻ると、オリバーが仁王立ちしていた。私の背後に隠れる妻に、つい笑ってしまう。私も一緒にオリバーからのお小言を聞いてから解放された。
ションボリしている妻を甘やかしていると、気持ちは浮上したらしい。軽食を済ませ、私たちは湖畔を散策。
女神様とコンタクトを取ってからと言うもの、私の中には一つだけ燻っている事がある。女神・・・の力があれば、カオリの元の世界に戻せる手段があったかもしれないと言う事だ。
そう思えど、私は意気地が無い。ずっと、切り出せないでいる。カオリは私にあの時も、私と共にあると誓ってくれた。
この燻る気持ちを言ってしまうと、あの決意を蔑ろにするのでは・・・いや、ただ私に意気地がないだけか。何処にも行って欲しくない。私の傍で生きて欲しい。
どんな困難がこの先起こっても、私が共に歩みたいと願うのはカオリだけだ。こんなズルい私ですまない。燻る気持ちは私の贖罪として抱えていこう。
「ルー様?」
ふと、カオリが立ち止まる。
「次に生まれ変わったら、私がいた元の世界で私を見つけてくれませんか?」
「カオリがいた世界?・・・あぁ、その未来を想像しただけで楽しみでしかないな。」
「私が幸せだと思う時、この心にいつも浮かぶのはルー様ですから。」
そう言って微笑むカオリ。その言葉を聞いて、私の罪が許された気がした。
「私も同じ気持ちだ。自身でも、少々持て余す程に重いものだが、どうか受け入れてくれ。」
「私も負けていませんから。」
そう言ったカオリが笑い、つられて私も笑顔になった。