第13章 この心にいつも浮かぶのは
それでも、祝いの言葉を幾つも貰い、気分は向上していった。
夜も更け、自室に戻る私たち。カオリは、半分疲れで眠そうだ。いや、きっと眠ってしまうのだろうな。今晩は初夜だと言うのに。
私も初夜だからと言って、無理をさせたいとは思っていない。それに、婚儀の後の二週間は二人きりの時間が待っている。その為にも、執務を前倒しに頑張ったのだ。
カオリは・・・結果的に、入浴後に眠ってしまった。そんな妻の頬を撫でる。
「少しは、期待していたんだけどな・・・ま、仕方ないか。これも、惚れたものの弱み。」
穏やかな顔で眠る妻を抱き入れ、私も目を閉じた。
その翌朝。
目覚めスッキリらしい妻は、一瞬で顔色を青くさせて私の目の前で平伏した。どうやら、初夜に眠ってしまったことの謝罪らしい。
涙目の妻を見て、私は声を上げて笑った。
「そんなに泣きそうになるのなら、無理にでも起こしてその期待を叶えてやれば良かったかもしれないな?」
「え・・・。」
「ん?期待していたんだろう?私にどんな風に抱かれるのか。」
青くなった顔色が、真っ赤になった。だが、今日の妻はいつもと違っていた。
「き、期待してはダメですか?」
「え・・・。」
「す、好きな人と結婚して、好きな人に触れられるのに・・・期待しない訳ないじゃないですか。」
あ・・・遣り過ぎたか?と言うか、きっと、今の私は妻と同じく赤面しているだろう。きっと、揶揄われた意趣返しとかじゃなく、それが真実なのだろう。
「あ~、一生、カオリに勝てそうにないな。」
口付けだけは熱いものになったけれど、今日から別荘で過ごす予定となっている。少々、残念な気がしないでもないが、私たちは準備をし予定通りに別荘へと向かった。
二人だけの馬車の中、道中は夜伽が無かった分だけ濃密な時間となった事だけ伝えておこう。
昼を過ぎた頃、要約、目的地に到着した。湖が美しい山間部にある別荘の内の一つだ。
妻は気に入った様で、メイドを連れて・・・そのまま、迷子になった。貴族の令嬢らしからぬ身軽な立ち振る舞いが故、メイドの存在を忘れ散策しまくったらしい。
だが、妻には私の魔力を纏わせている。きっと、不安で泣いているかもしれない。早急に、見つけなくては。