第13章 この心にいつも浮かぶのは
微睡む中にいたカオリだったが、徐々に目が大きく見開く。
「・・・はい。」
頬を赤く染めたその顔に近付き、柔らかい唇に自身の唇を重ねた。やがて、日の光が差し込み、辺りが色を帯びていく。
「カオリ、今日は付き合って欲しいところがある。」
「分かりました。」
私たちが向かった先は、あの分岐路。でも、今まであった筈のあの大木は跡形もなく消えていた。ただ、その場にはあの大木の生まれ変わりかと思う小さな苗木があった。
「あの大木の様になるには、どれ程の月日が必要なのだろうな。時折、私と見に来ないか?」
「見たいです。ルー様と出会った場所ですし、大切なところですものね。」
「そうだな。」
フト、カオリの表情が翳る事に気付く。
「どうかしたのか?」
「ルー様が、モテるのは分かっていましたけど・・・恥ずかしくて不安なんです。」
「ん?恥ずかしくて不安?」
そこで、あの現象に気付く。
「私への愛がなせる業を、恥ずかしく思う必要はない。それと、不安と言うなら婚礼を早められる様に尽力しよう。」
準備なら、順調に進めてある。両親に話せば、もっと時間を短縮出来るやもしれない。
「では、直ぐに城に戻り、父上に進言しよう。いや、母上の方がいいかもしれないな。ほら、帰ろう。」
馬上でカオリを抱き、城まで馬を駆けさせた。
案の定、母上は嬉々として婚儀までの日数を短縮させた。父上が苦笑いするほどに。
あの日から半年後。国を挙げての祝いが催された。純白のドレスを身に纏った愛する人は、より一層美しかった。見惚れてしまうほどに・・・。
皆に見守られながら、生涯の愛を誓った私たち。雲の合間から差し込む、光の柱たち。私たちの門出を祝福してくれている様だった。
女神の代理人との結婚に、国民は多大な期待と明るい未来を想像しただろう。そんな中・・・。
「祝いに来てくれていたのですね。」
「王妃様に許可は貰ったよ。王妃様には感謝しているからね。」
「あの王女と縁が切れたからですか?」
且つての、あの皇子と対面。
「まぁね。でも・・・。」
「でも?」
「新しい候補を勧められたんだけど、アレって嫌がらせかな?」
母上が皇子に見合いを勧めた。隣国の公爵家の令嬢だ。身分的にも問題はない。ただ、剣術至上主義の勇ましい女性だ。きっと、いい手綱を握ってくれるに違いないと思う。