第13章 この心にいつも浮かぶのは
私の提案からか、女神様とカオリは交換日記をしている。微笑ましい状況だ。まさか、カオリの前世が女神様の娘とは思ってもみなかった。
前世でも、人間の王子と恋に落ちた。今世でも同じ。
女神様から、カオリを悲しませたら地獄に落とすと冗談にはならない言葉を貰った。カオリは驚いていたが、私は当然だと思っているので一向に構わないが。
私への呪いが消え、国中は祝いのムード一色。
そんな中、我が国に届いたのはあの王女の訃報。【赤女】、もとい魔法使いが言った言葉は本当だったらしい。心臓だけ抉り取られた状態で死亡していた王女。
良い思い出などない私だったが、愛する者とこうして出会える切っ掛けをくれたと思えばそう悪い事ではなかったと思える。国王様にはお見舞いを申し上げるだけに止め置いた。
そして、もう一つ。
ずっと、私が見ていた悪夢。私の神経を擦り減らす原因となったもの。その悪夢を久しぶりに見た。
今回の悪夢は、いつもと違っていた。あの時と同じく、景色が見える。あの時と同じあの分岐路に私は立っていた。
目の前には二つの道が続いている。何ら変哲もない道だ。一般的に言って、どちらかを選ぶのがセオリーだろう。しかし、私は何方も選ばなかった。
今がいい・・・そう思った。未来を示す道は、私は愛する者と共に歩みたい。フト、大木の上を見上げて驚く。
「貴女は・・・」
神々しいまでのその容姿をした女性は、私を見て微笑んだ。あぁ、そうか。貴女が女神様の娘。景色に溶け込むように消えてしまった一瞬の出来事だったけれど、何故か私は無償にカオリに会いたくなった。
私も、あの書物に女神へ質問を投げかけてみようか?いや、仮とは言え、親子の疎通手段にそれは無粋か。
もう、獣の唸り声は聞こえない。暗闇の中でもない。
「ルー様?」
私の名を呼ぶ愛おしい声。振り返れば、私の胸の中に飛び込んで来た愛する女性。しっかりと受け止めては、優しく抱き締める。
「一緒に帰ろう。」
「はい。」
その後、私は目覚めた。直ぐ傍にある愛らしい寝顔のカオリを抱き締めると、腕の中で身じろぎした。
「ルー・・・さま?」
「私を迎えに来てくれてありがとう。命の限り、守り愛しぬくと誓う。だから、私の妻になってくれ。」