第1章 私の異世界転生
言葉選びを間違えたと思った時には遅かった。震える腕で、苦しいくらいに私はルー様に抱き締められていた。内臓が出そうである。
でも、国王たち公認になったし、周りからとやかく言われることはないだろう。それだけでもありがたい。
ルー様の背を撫でると落ち着いたのか、回された腕が解かれた。顔を見れば、うん、無表情だ。
謁見が終わり、私たちは王城にある薔薇園へと来ていた。流石、一国の庭園である。
「ルー様、お聞きしてもいいですか?」
「何だ?何でも聞いてくれ。愛しいカオリに隠し事などしない。」
言葉は甘いが、無表情。アンバランスだなぁと思いつつ、話しを続ける。
「どうして、お一人であんな場所にいたのですか?」
「夢を見たんだ。カオリと出会える夢を。」
「えっ、夢?それを信じたのですか?」
「そうだ。そして、それが真実だった。」
そう言われれば、何も言い返せない。異世界はそういうもの?と勝手に解釈することにした。
「えっと・・・ルー様は何故私を・・・。」
「愛してる。」
まさかの一言で黙らされてしまった。
「私と一生共にいてくれるのだろう?」
確かにそう言ったけれど、意味合いが違うというか・・・。だからと言って、ルー様が嫌だとかそういうのではなくて。
「案ずるな。何も、直ぐに事を運ぼうとはしない。今暫くは、お互いに距離を縮める為の時間を持とうと思う。」
一先ず良かった。直ぐに結婚とか言われたらどうしようかと思った。
「もし・・・もし、どうしても私が嫌だと言っても、私は恨んだりしないから安心してくれ。人の心は移ろうのが世の常だからな。」
無表情でそんなことを言うから、つい詰め寄ってしまった。
「私は浮気者は大嫌いです。ルー様は心変わりをされると仰りたいのですか?」
「いや、そうではない。カオリの心が私にっ!?」
「惚れさせるくらいの気概は無いのですか?」
ルー様が目を大きくした。と、私・・・今何って言った?何か、余計は火点けちゃった?
咄嗟に強く抱き締められ、柔らかい感触が唇に触れた。それはとても深くて甘い口付けだった。
が、我に返ったらしいルー様がいきなり動きを止め、私を離しては背を向けた。見上げれば、耳が赤くなっていた。
照れてる?あんなことしておいて。
きっと無表情なのだろうけれど、慌てふためいているルー様が何か可愛かった。