第10章 女神の代理人の手腕
全くもって、意味が分からない。そんなものは止めて欲しいと言ったのだけど、財務部の皆に泣かれて撤去を諦めた。
その後、何故か私はルー様と共に国王様との謁見に来ている。その傍らには、宰相や大臣たちも同伴。概ね、私を好意的に思ってくれる人はいるものの、そうではない人もいる訳で・・・。
煙たそうに私を見る人がいたので、凝視してみた。そう、凝視である。初対面だが、そこまで煙たがられる理由が分からない。なので、真顔で凝視。
だけど、その視線を遮ったのは隣りにいるルー様だった。
「あの者が気になるのか?」
「何やら、睨まれたので。」
「勉強会に参加しようとして、断わられた者の親だ。」
今回の勉強会の参加者は、財務部の人のみのもの。だって、仕事で使うんだもの。優先順位は高いでしょう?確かに、参加を求める事があったのは聞いていたけれど・・・。
そして、私はルー様と会話しつつ凝視を止めない。やられたらやり返す、三倍返しだ。なんて馬鹿な事を思っていると、どうやら忍耐が切れたのは相手の方だった。
声高々に、財務部の人間だけが特別扱いされていると騒ぎ出したのだ。今は、国王様が現れる前の待機段階。ルー様がいると言うのに、これまた程度の低い煽り屋だ。
でも、私はただ黙っているだけのお淑やかな令嬢などではない。なので、大声にはならない程度に言い返してみた。
「未来の財務部を担う人の育成の場をお願いしようと考えていたのですが、特別扱いは不当だと仰る方がいる様なので今回のお話しは無かったことにします。」
誰もが、私の言葉に息を飲んだ。
「良かったですね?貴方の思う通りになって。では、ルー様執務に戻りましょう?」
ルー様はオリバー様に伝言を頼み、私と共に執務室へと向かう事にした。去り際、ルー様は私に悪態をついた者へ鋭い一睨みを残した。
そろばんは増やして貰えたが、財務部の人しか使えない様に厳重に管理されているらしい。でも、貴族の人が大半だ。自前のそろばんを作る人も増えている。
私たちがいなくなった後、中々の騒動となったらしい。女神の代理人である私に楯突いたと言って、その貴族と縁を切るという状況になった様だ。
その後の国王様は、議会で多数決を取り、財務の学校を設立することが決まったと教えてくれた。