第10章 女神の代理人の手腕
オリバー様は左程気にしていない様だったけれど、私の方が何か居たたまれなかった。そして、執務室には同伴。
そうそう、この国と言うかこの世界には電卓など存在しない。なので、そろばんの絵を書いて作って貰うことにした。二人揃って不思議な顔をしていたけれど、ルー様は二つ返事で作ってくれると約束してくれた。
何もかもがアナログだけど、こればかりは仕方ない。そして、計算している私のメモ書きが気になったらしいオリバー様が尋ねてきた。
「カオリ様、この数字と暗号の様なものは何ですか?」
「計算式のメモ書きです。」
「これが計算式?」
オリバー様に聞けば、この世界に掛け算や割り算は特別な勉学を修めた者のみが扱えるのだと知らされた。私は簡単な九九の問題を出して、オリバー様に説明した。
二の段の九九の問題である。オリバー様は興味深そうに私の話しを聞いてくれた。
その数日後、どうしてこうなった?
元々賢いオリバー様は、簡単に九九を覚えてしまった。その事はどうでもいい。だが、それを財務部で披露したオリバー様のせいで・・・私に教えをと財務部の人たちから申し出があったらしい。
丁度、その頃にそろばんも出来上がり、余計に私は注目を浴びた。そろばんは・・・何故か、五台あった。一台は私専属。そして、ルー様とオリバー様も所望した。
残ったのは二台。嫌、その事はどうでもいい。この事が国王様の耳にも入り、何故か私が講師として教鞭を取ることになった。
流石に断われなかったので、九九の表を作っては覚えて貰う事にした。そろばんを使える人は二人のみ。九九を覚えた人から優先的に使える様にした。
と言っても、私が教えるのだけど・・・。そして、その講習会には、ルー様もオリバー様も自前にしたそろばんを持って参加している。
勤勉で向上心のある財務部の人たちは、こぞって参加した。仕事が滞るのは困るので、決まった曜日の決まった時間の定員制の開催。
私も子供の頃にやった、イメージしたそろばんの練習を皆が真面目に行っていた。その光景を見た国王様が、皆にも使える様にそろばんを作ってくれることになった。
ルー様やオリバー様も、直ぐに覚えてしまった。その後に聞いた話しだけど、財務部には九九の表が大きく貼られているらしい。
更にもう一つ。
【カオリ様万歳!!】