第10章 女神の代理人の手腕
見合いの為に出立する朝。あのキラキラだけ皇子と共に、食事をすることとなった。相も変わらず、ルー様は私の隣りにいて・・・長いテーブルを挟んだ向こう側に、キラキラだけ皇子がいる。
席の配置を見た皇子は固まっていたけれど、もっと近くで会話を楽しみながら食事をしたいと言って来たのでその通りにしてみた。
やたら、自国の特産などを自慢した話題ばかりだ。だけど、鉱石で人は生きていけない。この人は仙人で、霞でも食べて生きていけるのか?なんて馬鹿な想像をしつつ、全く興味を示さない私に次々と話題を変えて来る。
「貴女の、最も興味あるものはどんなものなのでしょう?」
リンツ皇子からの質問に、私はルー様を見た。ルー様も私の返答に興味あるのか、ジッと私を見ている。
「特に何もありませんね。だって、私にはルー様がいてくれますから。」
食べたいケーキも食べることは可能になりそうだし、私の好みそのものであるルー様が私を想ってくれている。
「わ、私がルーチェス王子より劣ると?」
「ただ、私の好みがルー様だったと言うだけです。」
その後の私は、如何にルー様がイケメンで素晴らしい人格者か半泣きになりそうなリンツ皇子にプレゼンした。最後の一滴まで絞りつくすかの様に話し、逃がしてはあげなかった。
余程、自分に自身があったのだろうが、人の好みはそれぞれだ。灰になった皇子は、早々にこの国を出立していった。
国王様たちを始め、誰もが上機嫌で見送ったらしい。私は見送りは遠慮しておいた。興味ないのが理由だ。
その後のルー様からの愛情が籠った抱擁は、とても大変だった。私から離れ様としないルー様に、オリバー様でさえ持て余すほどだ。
そして、こんな調子なのだ。
「好きだ、かおり。愛している。」
愛の言葉を吐き続けるルー様。そろそろ、オリバー様の冷たい視線で私が射抜かれそうだ。
「ルー様、執務を致しましょう?私は、向上心のない人は嫌なので。」
「向上心・・・あ、自給率。分かった、かおりからの期待の為にもこの国の為にも尽力しよう。」
良かったぁ・・・オリバー様の冷たい視線が無くなった。私の存在がルー様の足枷になったら、問答無用で処分されそうかも。
自室から出る前に、ルー様は立ち止まって前を向いたままこう言った。
「その様な目で、私のかおりを見るな。不愉快だ。」