第9章 友好国の皇子
「怒らせたか?」
「も、もうっ・・・仕方ないですね。怒っていません。」
「良かった。嫌われたら私は生きていけない。」
カオリの視線が忙しくあちこちへと動く。
「えっと・・・こ、光栄です。」
真っ赤になったカオリから出た言葉に、私は幸福で愛おしくて笑ってしまう。
「る、ルー様・・・今、笑って・・・。」
「ん?」
「今、笑ってました!!」
その報告は父上たちにも為され、それはそれは大変喜ばれた。これで、増々カオリの存在が大きなものとなる。
そこへ自身の思いを捻じ込んで来たのは、リンツ皇子だった。是非、その幸福にあやかりたいと面談を申し込んで来た。
父上に呼ばれ、直接尋ねられたカオリはアッサリと承諾した。父上の顔を潰したくないと承諾したのだと言う。
そして、準備されたのは茶会の場。父上に母上、私とカオリそしてリンツ皇子の計五人の茶会だ。リンツ皇子のキラキラ度が半端ない。
その装飾、重くないか?とツッコんでしまいそうになるほどの、装飾品の数々。少々目が痛い。それでも、本人からすれば自分の存在の方が輝かしいものだと自負しているのだろう。
カオリはリンツ皇子を見て、一瞬目を瞬かせた。やはり、眩しかったのだろう。茶会は穏やかに始まった。だが、カオリに対して質問攻めである。
今の今まで、普通に返答していたカオリだったが、急に黙り込んだ。
「あ、あの・・・如何されましたか?」
「それらの装飾は、本当に必要ですか?」
今度は、怒涛のカオリからの質問攻めである。女神の代理人の立ち位置を理解したカオリは、容赦なくその装飾の価値や今、国が置かれている状況について追及し始めた。
この情報も、私の執務を手伝ってくれていたが故の産物だろう。まさか、こんな風に生かしてくるとは想像もしていなかった。
「随分、ご自身に自信がある様ですけど、ならば猶更、装飾は少なくてもいいのでは?そんなものなど無くとも、ご自身が輝いているのですよね?」
「それは、私の事が美しいと言っているのですか?」
「まさか。」
完全な否定の言葉に、リンツ皇子は固まった。
「で、では、どういう意味で・・・。」
「人の好みはそれぞれです。」
お前になど眼中にないと明確に言ったカオリに、リンツ皇子は衝撃を受けたらしい。