第9章 友好国の皇子
リンツ皇子の国王への挨拶後は、同伴したくなかったが男同士で応接室で時間を過ごした。全くもって、楽しくない。理由は、愚痴と私の女神への興味しか話題にしないから。
これはアレか?私を煽っているのか?
「呪いのせいだろうけど、表情が欠片も変わらないのはどう思われているんだい?」
「何も?」
「何も?そんなはずはないだろう?」
正直に言えば、何もということではないのだが、可愛いとは自身の口から言いにくい。それが、悪い意味ではないと分かっていてもだ。
「でも、事実。」
「そうか。あ、今日の晩餐を一緒に出来ないかい?」
「国王と王妃では不足だと?」
リンツ皇子が黙った。流石に、国王と王妃に不足とは言えないだろう。
「では、そろそろ私は執務に戻るとします。」
「あ、あぁ、久ぶりに話せて良かったよ。では、また。」
明後日にはここを経つ予定だ。さっさと出立して、さっさと縁談を纏めて落ち着いてくれ。そう願わずにはいられなかった。
そもそも、婚約者がいなかったか?確か・・・あぁ、そう言えば、リンツ皇子は自分の方が美しいと言って、自国の公爵令嬢にフラれたんだったか。
普段、大人しい人を怒らせると怖いと体験したと聞いた気がする。だったら、今の状況は自業自得なのでは?それに、かおりは私の女神だ。
オリバーにリンツ皇子の事を国王に報告させ、私は続きの仕事に取り掛かった。そう言えば、あの族の一味は順調に分散しつつあると報告を受けた。
女神の処罰とは、それほど厳しいものだったのだろう。確かに、あの稲光りは激しいものだった。それほど、私を愛してくれている証拠。
ん?気配を感じる・・・。
顔を上げれば、扉の前から感じるかおりの気配。そっと近づき、ゆっくりと扉を開けば・・・やはり、目の前にいた。
「こんな場所でどうかしたのか?」
「る、ルー様っ!?あ、えっと・・・。」
「ほら、入って来い。」
腕を引っ張り、扉を閉める。
「お仕事中だったのでは?そ、それに・・・綺麗な人が訪問して来たと聞きました。」
「確かに人だが、男だ。」
「えっ?だ、男性だったのですか。」
頬を赤くして、ホッとした顔をする。あぁ、溜まらなくこういうところも愛おしい。
「会ってみたいか?」
「いえ、お構いなく。」
これまた、簡潔な拒否する意見だ。リンツ皇子が聞けば、どう思うやら。