第1章 私の異世界転生
支度が出来た頃、ルー様(そう呼ぶことになった)が迎えに来てくれ、食堂へと案内された。何故か、近距離で隣り同士に並んで食事をしている。
異世界の食事事情を危惧していたけれど、美味しくて安心した。だが、無表情のまま私を見詰め食事をするルー様には少々辟易する。というか、恥ずかしい。
「あ、あの・・・そう見詰められると、恥ずかしいのですが?」
「ん?だが、愛らしいカオリを見ているのは私として嬉しいのだが。今も私の心が躍って鳴りやまない。」
これも無表情でそんなこと言う。
「本当にそう思ってます?」
「疑うのか?ならば、知って貰わねば。」
私の手を掴むと、ルー様の胸に触れさせられた。あ、確かに心臓の音が激しい?って、私ってば何をやってるの!?
「わ、分かりましたから。もう充分です。」
「そうか。それなら良かった。」
表情が伴っていないが、どうやら嘘ではないらしい。この顔面偏差値がとんでもなく高いルー様に表情が伴ったら、大変なことになりそう?
「食事の後、国王との謁見が控えているから付き合ってくれ。カオリを紹介する。」
「わ、分かりました。」
お世話になったのに、国王相手に無視は出来ないよね。仕方ない、腹を括るしかない。でも、紹介って?
ガチガチに緊張したまま、食事の後謁見に向かった。だだっ広い謁見室に国王様と王妃様。そして、宰相と大臣と対面する。
「我はウィンドミル国の国王ルーハインド=サファイア。こちらが王妃のサーシャ=サファイア。女神の代理人と謁見出来たことを嬉しく思う。」
「父上、こちらがカオリ=アオイです。」
「カオリ=アオイです。」
一先ず、挨拶だけは終わった。さて、何を言われるのやら?得体の知れない馬の骨はどうとか言われるのだろうか?
「カオリと呼んでもいいだろうか?」
「はい。」
「それで、ルーチェスを見て何か思わなかったか?」
まさかの質問。先ず思ったのは、ルー様はイケメンです。でも、そういうことではないのだろう。
「表情のことでしょうか?」
「そうだ。」
良かったぁ、間違ってなかった。そのことに安堵する。
「我が息子ルーチェスは、呪いに掛けられている。」
「の、呪いですか?」
「命を脅かすものでは無いのだが。」
その言葉にホッとする。