第8章 嫉妬も罰も適量に
バッハローの群れから離脱しては、器用に私を見ながら歩き続けるルー様。でも、最後の砦があった。
目の前から現れたのは、大臣の一人とその令嬢の親子。私に目などくれずに、空気扱い。まぁ、どうでもいいけど。大臣は侯爵家の当主らしく、娘をルー様に宛がおうと熱心に勧めているのだけど・・・。
「私のカオリは、愛らしいだろう?」
あ、大臣の表情が固まった。何処をどうすれば、私の事を誉めて来るのか分からないみたいだ。勿論、私も分からない。そして、令嬢の方は私を軽く睨んでいる気がする。
「私たちの仲は、国王にも認められた。他に目移りする訳がないだろう?こんなにも愛おしいと思っているのに。」
大臣が、温い目をした。これでは、ルー様が私にメロメロだと知らしめている様なものだ。そして、国王様の許可もあるとなれば、それ以上は強硬出来ないだろう。
でも、令嬢は違った。
ルー様に近付いて来ては、一緒に食事でもなんて誘って来て父親である大臣を驚かせていた。
「断わる。食事の時間は、カオリを見るのに忙しいからな。では、失礼。」
ルー様、食事の時間は私を見る時間ではありませんよ?食事の時間は、食事をする時間です。それに、私は見世物ではありません。
すれ違い様、令嬢が私を見て呟いた。
「私の方が美しいのに・・・。」
確かに、私もそうだと思う。何せ、侯爵令嬢だもの。私みたいな一般人とは雲泥の差だって分かってる。
ん?歩みが止まった。ルー様を見ると、眉間に皺が刻まれていた。怒ってる?
「女神の代理人を侮辱するとは・・・我が国に、反旗でも翻すつもりか?それに、私のカオリは外も内も誰よりも美しいが?何なら、何処がどう美しいか話して聞かせてやろうか?」
そんな羞恥プレイは止めて欲しい。何とかルー様を宥めては、食堂へと向かった。
そして、食事なのだけど・・・安定に私を見ている。
「一つ聞いてもいいか?」
「何ですか?」
「どうしてこうも、カオリは愛らしいのだ?」
給仕の皆も、私も生暖かい目をするしか出来なかった。大丈夫だろうか?ルー様の嗜好って・・・。
「ルー様の好みは知りませんけれど、外見的にはさっきの令嬢の方が綺麗だと私は思いますよ?」
あれ?ルー様は、私の言った言葉に首を傾げている。どうやら、賛同は得られなかったらしい。