第8章 嫉妬も罰も適量に
一頻り考え込んでいるルー様だったが、私を見ては頬を撫でて来た。無表情のままなのに、何となく感じる色気。
「好みは人それぞれだ。私が思うに、カオリ以上の女性はいない。断言できる。」
「あ、ありがとうございます。」
「礼には及ばない。事実だからな。」
無表情なのに、アニメならハートマークが私に向かって飛んできている気がする。
「ルー様は、私に何かやって欲しいことはありませんか?」
「やって欲しいこと?こうして私の傍にいてくれるだけで十分だが。先程は、私だけを見ていてくれていただろう?どれ程、私が浮かれ訓練に身が入ったか。」
浮かれていたのに、訓練に身が入いるなんてルー様くらいじゃない?って、いきなり手を握り締められたっ!!?
「どうか、私から目移りなどしないでくれ。もし・・・そんな時が来たら、躊躇なくその相手をこの世から葬り去ってしまうだろうからな。」
えっと・・・私のヤキモチも大概でしたけれど、ルー様も負けてはいませんよね?
「ルー様?」
「何だ?」
「私もそっくりそのまま言葉を返しておきますね。」
ルー様は何故か、嬉しそうだった。お互いに重い感情を持っているのだから、おあいこって事でいいよね。
「あぁ、何も問題ない。」
「それで、お昼からは執務ですか?」
「あぁ、その予定だ。だが、その前に少しの息抜きをしようと思う。付き合ってくれ。」
食事の後、向かった先は薔薇の匂いが立ち込める庭へと来ていた。ちょっとだけイチャイチャしながら、薔薇の鑑賞も忘れない。
鑑賞を忘れないのは私だけであって、ルー様は私しか見ていない。なので、自分の唇を指でトントンとすれば、キス魔が降臨した。
こんな素晴らしい薔薇の庭園でのキスタイム。ロマン・・・あれ?いつもなら、ここで敏腕小姑が現れるのだけど。
って、段々ルー様の手つきも妖しくなってきた気がする。離れようとしたけれど、ルー様の腕はビクともしなかった。どうしてこんなことに?
私から誘ったから?火を点けちゃった?呼吸も苦しくなって来て・・・どうやら途中で目を回したらしい私はフェードアウトしてしまったらしい。