第8章 嫉妬も罰も適量に
「天候が回復したようだな。」
「そ、そうですね・・・。」
もう、笑うしかない。女神様、私の心は安定しましたのでお気遣いなく。ルー様は浮気者ではないので大丈夫です。
「おや、虹ですね。こんなに大きく鮮やかな虹を見たのは初めてです。流石、女神の代理人。」
女神様・・・えっと、これはご褒美か何かですか?
「確かに、これは素晴らしいな。カオリの笑顔の様に、目が離せない。」
無表情なのに、この言葉の甘さ。本当にこの人は、私を思ってくれているんだなと思わせてくれる。でも、そんな事をいいながらも、虹ではなく私をルー様は見ているのだけど。
その後は、通常運転の如く執務をこなして食事の時間となった。食堂へと向かう途中、どういう訳か煌びやかな令嬢たちが群れを成していた。
ルー様に気付くと、バッハローの群れの様に突進してきた。あ、バッハローは肉食ではないけれど、令嬢たちは肉食獣みたいに見える。
令嬢たちは、何処からかもれたらしいルー様の表情の変化について、喜ばしいと口々に囃し立ててきた。呪いにかかる前のルー様を知っているのならば、確かに心を奪われるいい表情だと認識しているだろう。
あ、えっと・・・平常心。
そう思っていたのだけど、当たり前の様に私たちの間に割り込んで来てはルー様に纏わりつこうとする令嬢ら。ちょっぴり、イラッっとしてしまう。
でも、平常心・・・。
そう思っていたのに、そう思っていたのだけど・・・心の中はどうやら私が思うより正直だったらしい。
窓一面に眩いほどの稲光が・・・眩しいっ!!それに、雷の音がとっても大きく近く聞こえる気がする。
ある意味、私の心の中が筒抜け状態なのでは?何これ、恥ずかしいのだけど。一歩後ずさろうとした私の腰に、回された腕によって引き寄せられる。
目の前には、ルー様の胸。驚いて見上げれば、瞳だけは喜びの色が見えた。そして、一際、大きな轟きがあり思わずルー様にしがみつく。
「愛してるよ、私の女神。」
令嬢らの目の前で、私に愛の言葉を紡ぐルー様。ルー様は、どうやらご機嫌らしい。
「さぁ、無駄な時間を過ごしてしまった。早く食事をして、今晩は眠るまで愛を囁いてもいいか?」
令嬢たちの、黄色い声と嫉妬の眼差し。
でも、私の心はそれに反比例して凪いでいた。単純な私で申し訳ない。