第6章 暫しの微笑み
その後は、デコレーション。いやぁ、頑張った~。そう言えば、贅沢の極みになるかな?チョコレートケーキもいつか作りたいな~。
「完成・・・でしょうか?」
「はい。お疲れ様でした、オリバー様。お手伝いありがとうございました。」
「いえ、それは構わないのですが・・・。」
何やら、オリバー様の背後から熱い雰囲気。一体、どうしたのだろう。何気なく、オリバー様の背後を見ると・・・そこに居たのは、料理人服を着た人たち。
あ、長い時間場所を借りたから迷惑かけちゃった!?慌てて謝罪の言葉を告げれば、料理人さんたちはひれ伏した。何故?
慌てて立ち上がって貰ったのだけど、誰もが目を潤ませている。一体、どうしたと言うのだろう?
「オリバー様、約束のものは?」
「ここにあります。」
約束のもの?オリバー様の手には、書類?
一番偉い人っぽい人がその書類を受け取り、神の啓示が如く天井に向かって掲げている。あれは・・・何?
「我ら料理人一同、一層の精進を重ねて参ります。」
「オリバー様、あの書類は?」
「カオリ様がご使用になられた食材の種類と分量などです。今後は、料理人たちに研鑽させる為に、(場所を借りる対価としても)このように書き留めさせていただきました。」
「そ、そうですか。」
まぁ、頑張ってください。美味しいものを食べられるのは私も嬉しいです。
「では、ルー様の元に参りましょう。」
「はい!」
執務室では、ルー様がやる気を滾らせて書類に目を通していた。無表情だけど、難しそうな雰囲気だ。
それでも、私の顔を見るなり柔らかい空気になった。
「すまないな、私の為に。」
「ルー様の為、だからこそですよ。それに、オリバー様に手伝って頂けましたので。」
「無粋な真似をするな、オリバー。」
無粋?・・・暫し考えて気付いた。そうか、相手は王太子。私が毒でも仕込むのじゃないか監視の為に?
「この様な呑気な方が、ルー様に作為を働かせる訳はないと分かっておりますが?」
「・・・オリバー?」
ルー様の声が低い。
「失礼いたしました。」
「許せるか?カオリ。オリバーの言葉を。」
優しい人だなぁ、ルー様って。でも、私は気にしない。立場を考えれば、オリバー様は自分の仕事をしただけだと思うから。それに、力仕事でこき使ったし?
「はい!」
笑顔で返事する私。