第5章 プライド
そう思っていたんだけどなぁ・・・あの女の子は公爵家の令嬢で、ノリア=チェルダリアと言ってルー様の三歳年下。留学から戻って来て、これからというときに私のことを聞いたらしい。
元々、行動力ある人みたいで、拒絶されても当たり前に付き纏って来る様になった。そして、私のことを隣国の王子にと勧めることも忘れない。
そして、今は植物園でお昼寝タイム・・・なのだけど、どうやら眠れないらしい。
「眠れないのですか?」
「色々と思うことがあってな・・・。」
「相手は公爵家の令嬢ですものね。身分からすれば、私より・・・。」
「女神の代理人以上に、尊い人はいない。」
でも、私は何の力もない出来ない小娘だよ。
「最近、体調がいいんだ。」
「えっ?」
「あの夢はまだ見ることがあるが、確実に時間が短くなっている。途中で目覚めても、苦痛でなくなったしな。」
ゆっくりと身体を起こすと、触れるだけのキスをするルー様。
「目覚めた時に、傍にカオリがいる。それが今は堪らなく幸福だと言える。」
「私でも役に立てたのなら良かったです。横になって目を閉じるだけでもいいので、少しでも休んでください。」
再び膝の上に頭を置いたルー様は、言われるがまま目を閉じた。ルー様の頭に触れゆっくりと撫でる。すると、落ちる様に眠ってしまった。
その日の夕刻。ルー様の執務室でお手伝いをしていると、国王様に呼びだされルー様とオリバー様は執務室を出て行った。
その間、私は部屋で留守番だ。執務室には施錠し、私を部屋まで送ってくれてから出掛けて行った二人。
ソファーで読書をしていると、何処からともなく騒がしい声が聞こえてきた。慌てた様子で部屋に駆け込んで来たのはオリバー様。
私の身の安全を確認してから、直ぐに部屋を出て行った。一体、何があったのだろう?部屋から出ない様にと言われたので、大人しく待機。
一般的に主人公なら、部屋を出て確認に行ったりするのかもしれないけれど、君子危うきに近寄らずである。元々、私には野次馬根性はない。
後でルー様が説明してくれるだろうと、穏やかに読書を再開。そして読み終わろうとした頃、ルー様が部屋に戻ってきた。
私の顔を見て、ホッとした雰囲気のルー様。隣りに座り、小さく息を吐いてから私を見た。
「言われた通りにここで居てくれて良かった。」