第1章 私の異世界転生
出だしは、黒髪黒目の容姿。この世界では、【女神の代理人】と呼ばれ、国で重宝されたらしい。
それから、この国の生い立ち。300年ほど続く中、戦争もあったと記載されていた。元の世界で社会を習う感覚だろうか?
女神の代理人とあるが、私は至って一般的な人間だった。取り分け何か才能があるわけでもなく。
そして、最後の文章。必要となると、ページが増える。その増え方は決まっていないと。文字通り、必要となった時なのだろう。
読み終えた後、あの赤女に突き飛ばされた時のことを思い出す。ニヤニヤと笑っていた。人一人の命を何とも思っていない顔だった。そして、誰かの声が聞こえた気がした。
「考えないといけないことがたくさんあるのに・・・疲れちゃったな。」
やがて、寝息を立て眠ってしまった。
少しして、イケメンが書庫に戻ってきた。先程の身なりとは違い、カジュアルな姿。そっと近づき、膝まづく。
「貴女は、私が請えば私を望んでくれるだろうか?」
起こさない様に抱き上げると、書庫から出ては静かな城中の廊下を歩き、ある一室へと入って行く。
見慣れたベッドの上に下ろしては、その隣りに自身の身体を滑り込ませる。頬に掛かる髪を耳に掛け、その額に口付ける。
「おやすみ、私の女神。」
そう、私は夢を見ていた。ニヤニヤした赤女が私を追い回すのだ。本当なら一発くらい殴ってやりたい。でも、人の命を軽んじた今の赤女は私には脅威でしかない。
後少しで追いつかれる!!そう思った時、私たちの間に現れたのはあのイケメンだった。私を背に庇い、赤女に剣を向けている。
ニヤニヤしていた表情が苦悶の顔へと変わる。そして、何かを呟いた後、赤女は霧となり消えてしまった。
朝日がまだ昇る前の薄暗い中、私は目を覚ました。視界に飛び込んで来たのは、誰かの胸元。そっと視線を上げてみると、あのイケメンと視線が合わさった。
「おはよう、私の女神。」
「はいっ?私の女神??」
顔が近付いて来たので、ギュッと目を瞑ると額に触れる柔らかい感触。そして、優しく私を抱き締めるイケメン。
えっと・・・一晩の間に何があった?
ここでも、暫し、イケメンと見つめ合う。今の私がおかれている状況が分からない。
「ここは・・・どこですか?」
「私の自室だ。」
返答を聞いて、私は自分の身体を見て安心した。