第1章 私の異世界転生
巷で賑わう異世界転生の物語。森の中だったり、豪華なお屋敷だったり、神様と出会ったり、聖女として召喚されたり多種多様な転生方法がある。
私はというと・・・どこかの分岐路脇にある大木の下で、イケメンに見下されていた。
暫し見つめ合った後、私は慌てて立ち上がった。辺りをキョロキョロと見回し、力なくその場にへたり込んだ。
「・・・ここ、どこ?」
「ウィンドミル国近くの分岐路だ。」
まさか、イケメンから返事が来た。ウィンドミルって確か風車?風車の国ってことかしら?
「私と共に来るか?」
「えっ?」
「少しなら説明できることがある。ウィンドミルまではもう少しだ。ここにいては魔物や人攫いに合うやもしれない。」
そう言って、私に手を差し出してくれた。何度かその手とイケメンを見ては、私はそっとその手を取った。力強く引っ張られた私は、勢い余ってイケメンの胸へと飛び込む羽目に。
「ご、ごめんなっ、ひゃあっ!?」
いきなり抱きかかえられた私は、お姫様だっこのまま一頭の真っ黒な馬に乗せられた。続けてイケメンがその背後に乗り込んだ。
「私に捕まっていろ。」
走り出した馬から振り落とされない様に、咄嗟にイケメンに抱き付いた。力強い腕が私の腰を支えてくれ、振り落とされることなく大きな城壁に囲まれたウィンドミル国に到着したのは閉門ギリギリだった。
馬はどんどん中世ヨーロッパ調の街中を抜け、大きなお城の中に入って行った。始めは物珍しさからキョロキョロと見回していた私だったが、お城に入った時点で嫌な汗が流れそうになっていた。
やがて、厩舎に到着し身軽に馬から飛び降りたイケメン。そして私を抱き下ろしそのままお姫様抱っこされる。
「あ、あの、下ろしてください。」
「気にせず私に身を任せていればいい。」
反論できずにそのまま黙っていると、城内の一室にそのまま連れられて行った。どうやら書庫の様で、イケメンはソファーに私を座らせてから、ある一冊の書物を私に差し出した。
「これは?」
「少しなら説明できることがあると言っただろう?これを読んでくれ。私は少し席を外す。直ぐに戻るから、この部屋から出ない様にな。」
足早に部屋から出て行ったイケメン。辺りを見回し思案したが、一先ずその書物を読むことにした。