第4章 隣の芝生は青く見える
どうやら、令嬢たちの心をヒビどころではなく完全に折ってしまったらしいルー様。いや、これは通常運転なのか?泣きそうな顔をして走り去った魅惑ボディの二人を視界に入れることなく、また抱き締めるルー様。
「首尾は上場です、ルー様。」
私は声を上げ、ルー様は気付いていた様だった。さっき想像していた敏腕小姑の存在を。
「ところで、あの王子がカオリ様を探しておいででしたよ。あちこちでカオリ様の居場所を聞いて回っている様です。」
「そうか。熱心だな。まぁ、私には劣るが。」
熱心さで張り合うのはどうなの?って、ルー様は私しか見ていないし。本当に、大好きですっ!!
「聞いて貰いたいことがある。部屋でも構わないか?」
「勿論。」
敏腕小姑はいつの間にかいなくなっていて、ルー様の部屋で二人っきりだ。どんな話しなのかと身構えていたのだけど、内容はルー様が見る夢の話しだった。
霧のかかった何処かも分からない場所で、獣の唸り声が聞こえるだけの夢。そんな不安にしかならない状況を、月の三割見るなんて寝不足になっても仕方ないと思う。
だから、ルー様は合間にお昼寝タイムがあるのか。納得である。私の事も夢で見て、あの場に行ったのだと教えてくれた。
あの場所は分岐路。もし、もう片方の道を選んでいたとしたら、私はどうなっていただろう?そのもう一つの選択肢も気になる。
「でも、夢のことだと思わなかったのですか?」
「不思議と思わなかった。だから、出会わせてくれたのかもしれないな。」
私の髪を撫で頬を撫で、でも無表情のルー様。少し悪戯心が芽生え、もしこそばせたとしたら真顔で笑う?のだろうか。ん?もう、私自身が意味不明だ。
不思議なことがあるけれど、異世界はこんなものってことで違和感なんて思っていない。どんなことが普通なのかもわからないからね。
受け入れるのみ。
「って、ルー様、何をしているんですか?」
「この愛らしい唇が想像以上に柔らかくてな、つい。触れずにはいられなくなっている。」
ふにふにと私の唇を指先で押しているルー様。ねぇ?そんなことされたら、噛み付いてしまわない?私だけ?勿論、甘噛み程度だけどね。
そう、今、ルー様の指先が私の口の中に・・・。無表情で呆然中のルー様。えっと、甘噛みしたのはいいんだけど、これどうすればいいの?