第4章 隣の芝生は青く見える
「何故か、ゾクゾクするのだが・・・これは、誘われていると思っていいのだろうか?」
無表情なのに、目は熱を帯びている風に見える。あれ?私・・・ソファーに押し倒されてる?いつの間にそうなったの?
甘噛みしていた指を外せば、私が噛んでいた指先をペロッと舐めるルー様。凄く色っぽく見える。
「婚前交渉を望めば、受け入れてくれるか?」
「こ、こ、婚前交渉!?」
「カオリの全てを愛したくて堪らない。」
王族って身持ちは固いのでは?パニック全開の私に、ルー様の顔が近付き額に触れる唇の感触。
「今すぐとは言わない。だが、考えておいてくれ。」
「わ、分かりました。」
「怖がらせたか?」
「怖くはないです。」
ただ、その綺麗な瞳の熱にパニックになっただけです。無表情なのに、色気を備えているなんてどれだけ高性能なのやら。
でも、その後キス魔が降臨してルー様の熱を分け与えられました。全身が熱いです。
「くれぐれも、他の輩に付け入れられない様にな?」
「だ、大丈夫です。私にだって、選ぶ権利はありますから。でも・・・怖い時は、ルー様が助けて下さいね?」
「あぁ、その役目を担うのは私だけでいい。フフ、可愛いな。」
無表情でフフって笑ってる。ちょっと面白い。
愛を育み合っていると、いつものメイドさんの食事を知らせる声。軽々とルー様に抱き起され、濃厚なキスをされてから食堂へと向かった。
「顔色が宜しい様で何よりです、ルー様。」
「カオリのお陰だな。」
「私は特に何もしていませんよ?」
「謙遜するな。他に理由などない。」
女神の代理人って、そんなに凄い力を持っているのかな?私には分からないけれど、ルー様が元気なのならいいよね。
穏やかな時間だったのに、その静寂を遮ろうとしたのは昼間見た女の子だった。重そうなドレスを軽々と翻し、颯爽と現れたのだ。
女の子の視線は私は一睨みしてから、ルー様に甘い目を向けた。ルー様のファン確定。甘えた声でルー様の名を呼ぶ女の子だったけれど、私たちはその横を素通りした。
いいのか?私は兎も角、ルー様は名を呼ばれたと言うのに。そして、女の子は貴族らしくない行動力で、私たちの前に回り込んで来た。